【MUPウサギWeek16】損益計算書(P/L)を理解する

本稿の趣旨

 本稿では,損益計算書について解説します。

 損益計算書は,「P/L」(Profit and Loss Statementの略)とも呼ばれており,こちらの呼称の方が馴染みのある方もいらっしゃるかもしれません。

 損益計算書は,財務諸表の1つであり,損益計算書の内容を理解できることは,投資をやるにしても,事業をやるにしても,不可欠のスキルです。

財務諸表は,いくつかの財務関係書類の総称であり,財務三表と呼ばれる①損益計算書,②貸借対照表,③キャッシュフロー計算書が特に重要と言われています。

 ところが,読者各位の中には,損益計算書等の計算書類に対して苦手意識をもっており,敬遠していらっしゃる方も少なくないと思います。

 しかし,安心してください。

 損益計算書等の計算書類は,思っているほど難解なものではありません。

 本稿では,損益計算書に焦点を当てて,苦手意識をもっていらっしゃる方でも,スッキリ理解できるよう説明していきます(その他の計算書類については,別稿で取り扱います)

損益計算書とは

 まず,損益計算書がどういうものか,ざっくりとイメージをもっていただくことにしましょう。

 以下は,2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間のPKSHA社の損益計算書です。

 本稿をお読みになっている方であれば,このような計算書類をご覧になったことがある方は多いと思いますが,損益計算書とは,ある企業が1年間で一体どれだけの利益を出したか,あるいは,どれだけの損失を出してしまったかを明らかにするための文書です(こうした損益計算書の目的である利益や損失のことを専門用語で当期純利益当期純損失といいます。)。

 いってしまえば,企業は営利を目的とする組織体なので,損益計算書は,企業の1年間の経営の成績表のようなものといってよいでしょう。

 ちなみに,PKSHA社では,10月1日から翌年9月30日までの1年間の成績を出していますが,4月1日から翌年3月31日までの1年間を基準に成績を出す企業が多いです。

 なお,この1年間の区切りのことを会計用語で会計期間といいます。一般に,事業年度と呼ばれることもあります。

損益計算書の構造

 では,損益計算書が1年間の企業の成績表であることが分かったところで,次に損益計算書の構成要素についてみていきましょう。

 損益計算書は,1年間で企業があげた利益(損失)を記載したものだと述べましたが,利益(損失)は,収益から費用を引くことで求められます。

利益(損失)=収益-費用

 損益計算書の記載も,大きく①収益,②費用,③利益(損失)に分類することができます。

 結局,損益計算書は,1年間の収益と費用がそれぞれどれくらいだったかを洗い出して,収益から費用を差し引きし,利益(損失)がいくらだったかを出そうとしているだけなのです。

 ただし,損益計算書は,いきなり最終的な利益(損失)である当期純利益(損失)を求めようとしているのではなく,5つの段階に分けて,当期純利益(損失)を算出しています。

 具体的には,まず①売上総利益を求め,次に②営業利益を求め,そして,③経常利益,④税引前当期純利益と求めていき,最後,⑤当期純利益を算出しています

  • 売上総利益
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益

  • 当期純利益

 では,以下,それぞれの利益について,どういうものかみていきましょう。

5つの利益の概要

①売上総利益

 まず,売上総利益とは,本業の利益にあたるものです。

 「粗利あらり」と呼ばれることもあります。

 売上高から売上原価を差し引くことによって算出することができます。

「売上総利益」=「売上高」ー「売上原価」

 売上高は,商品やサービスを提供することで得られた金額,売上原価は,商品の仕入れや製造にかかった費用です。

②営業利益

 営業利益とは,本業の営業活動によってもたらされる利益のことであり,販売費一般管理費を差し引くことによって算出されます。

営業利益=売上総利益ー(販売費+一般管理費)

 販売費は,製品やサービスを販売するためにかかる費用,一般管理費は,企業全体を管理するための費用です。

 販売費と一般管理費を併せて,「販管費」と呼ぶこともあります。

販売費 製品やサービスを販売するためにかかる費用 宣伝広告費等
一般管理費 企業全体を管理するための費用 人件費(※),賃貸料金,水道光熱費,通信費,交通費等

※ ただし,工場で働く工員の人件費等は売上原価に計上するのが会計上のルールとなっており,全ての人件費が一般管理費に計上されるわけではありません。

③経常利益

 経常利益とは,会社が行う全ての事業を通して得た利益のことであり,営業利益に営業外収益を加えて,営業外費用を差し引くことによって算出されるものです。

 「ケイツネ」などと略されて呼ばれることもあります。

経常利益=営業利益+(営業外収益ー営業外費用)

 営業外収益は,本業以外で毎月継続的に発生する収益,営業外費用は,本業以外で毎月継続的に発生する費用です。

 本業以外で単発的に発生する収益や費用については,この後説明する特別利益や特別損失として考慮されるため,ここでは考慮しません。

 ここで考慮するのは,あくまで毎月継続的に発生する収益と費用のみです。

 具体例としては,営業外収益については,預貯金の受取利息や貸付金の利子等を挙げることができます。

 営業外費用については,借入金の利息等を挙げることができます。

 経常利益の「経常」が,常に一定の状態で続くことの意味であることを把握しておれば,営業外収益と営業外費用が,毎月継続的に発生するものだけを指すことを忘れずに済むのではないでしょうか。

④税引前当期純利益

 税引前当期純利益とは,経常利益に特別利益を加えて,特別損失を差し引くことによって算出されるものです。

税引前当期純利益=経常利益+(特別利益ー特別損失)

 先ほど少し触れましたが,特別利益は,不動産の売却益や投資有価証券の売却益等,本業以外で突発的に発生した利益,特別損失は,設備の修理費用や災害損失,投資有価証券の売却損等,本業以外で突発的に発生した費用です。

⑤当期純利益

 税引前当期純利益という語感からピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが,次に行うのは,法人税等の税金の控除です。

 税引前当期純利益から税金額を控除することで,いよいよ当期純利益が決まります。

当期純利益=税引前当期純利益ー税金

 控除する税金としては,法人税や法人住民税,法人事業税が挙げられます。

 なお,計算の結果,当期純損失を計上した場合は,「△12,345」というように数字の前に「△」を付けることでマイナスの値であることを表すことができます。

 以下の損益計算書は,メルカリの2018年7月1日から2019年6月30日までを会計年度とする損益計算書ですが,当期純損失を計上しており,「△5,046」と記載されています。

損益計算書の構成

 以上を踏まえ,損益計算書の構成は次のようになっています。

 PKSHA社の損益計算書(以下に再掲)についても,該当事業年度に特別損失が発生していないことから,特別損失の記載が省略されていますが,上記と概ね同様の構成がとられています。

 ちなみに,「法人税,住民税及び事業税」の下に「法人税等調整額」という項目が設けられていますが,これは,税引前当期純利益と課税所得とが同一でないことによって,税引前当期純利益に税率を掛けて算出された法人税等の金額と実際に納めるべき法人税等の金額との間にズレが生じるのですが,このズレを埋め合わせるためのものです。

 法人税等調整額を理解しようとすると,細かい会計の知識が必要になるので,ピンとこない方は,この点についてはあまり気にせず,ざっくりと税引前当期純利益からは法人税等の税金を差し引いているのだということを理解しておけば足ります。

まとめ

 最後に本稿の復習を行いましょう。

 損益計算書は,財務諸表の重要な1つであり,一事業年度における企業の損益を明らかにするためのものでしたね。

 ちなみに,一事業年度の末日を期末というのですが,期末時点における企業の損益状況のことを当期純利益(損失)といい,これは,①売上総利益⇒②営業利益⇒③経常利益⇒④税引前当期純利益⇒⑤当期純利益(損失)というプロセスを踏んで算出されます。

 そして,これらの利益は下図のように損益を加減することにより算出できます。

 ある収益や費用がどの科目に当てはまるのか判断に迷うこともあると思いますが,営業外損益と特別損益の違いはもう大丈夫ですか?

 両者とも本業以外で発生する損益という点では共通ですが,営業外損益は毎月継続的に発生する損益,特別損益は,工場機械が故障したから修理に出した場合の修理費のように突発的に発生する損益のことでしたね。

 以上のことを押えておけば,損益計算書を自力で読み解くことができるはずです。

 損益計算書は,上場企業のIRページ等で閲覧することができるので,是非,一度ご自身で気になる企業の損益計算書を読み解いてみてください。

 以上,最後までお読みくださり,ありがとうございました!

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