【MUPウサギWeek19】キャッシュ・フロー計算書(C/F)を理解する

本稿の趣旨

 本稿では,キャッシュ・フロー計算書について解説します。

 キャッシュ・フロー計算書は,「C/F」(Cash Flow Statementの略)とも呼ばれており,こちらの呼称の方が馴染みのある方もいらっしゃるかもしれません。

 キャッシュ・フロー計算書は,財務諸表の1つであり,キャッシュ・フロー計算書の内容を理解できることは,投資をやるにしても,事業をやるにしても,不可欠のスキルです。

財務諸表は,いくつかの財務関係書類の総称であり,財務三表と呼ばれる①損益計算書,②貸借対照表,③キャッシュ・フロー計算書が特に重要と言われています。

 ところが,読者各位の中には,キャッシュ・フロー計算書等の計算書類に対して苦手意識をもっており,敬遠していらっしゃる方も少なくないと思います。

 しかし,安心してください。

 キャッシュ・フロー計算書等の計算書類は,思っているほど難解なものではありません。

 本稿では,キャッシュ・フロー計算書に焦点を当てて,苦手意識をもっていらっしゃる方でも,スッキリ理解できるよう説明していきます(その他の計算書類については,別稿で取り扱います)

キャッシュ・フロー計算書の概要

 まず,キャッシュ・フロー計算書がどういうものか,ざっくりとイメージをもっていただくことにしましょう。

 以下は,2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間のPKSHA社の(連結)キャッシュ・フロー計算書です。

 なお,この1年間の区切りのことを会計用語で会計期間といいます。一般に,事業年度と呼ばれることもあります。

 本稿をお読みになっている方であれば,このような計算書類をご覧になったことがある方は多いと思いますが,キャッシュ・フロー計算書とは,会社の家計簿のようなもので,会計期間における会社の現金の出入りを表したものです。

「キャッシュ・フロー」が日本語で「お金の流れ」という意味なので,読んで字のごとくっていう感じですね。

 ところで,PKSHA社では,10月1日から翌年9月30日までの1年間を会計期間としていますが,4月1日から翌年3月31日までの1年間を会計期間とする企業が多いです。

キャッシュ・フロー計算書の構造

 先ほどお示ししたPKSHA社の(連結)キャッシュ・フロー計算書をみると,様々な項目が縦に羅列しており,ややこしいなと思われた方もいるかもしれません。

 しかし,キャッシュ・フロー計算書の構造自体はとてもシンプルです。

 キャッシュ・フロー計算書を見る際は,「営業活動」,「投資活動」,「財務活動」という3つの要素に着目してください。

 実際にキャッシュ・フロー計算書を見ると,「営業活動によるキャッシュ・フロー」,「投資活動によるキャッシュ・フロー」,「財務活動によるキャッシュ・フロー」という項目が設けられていますね。

 「営業活動によるキャッシュ・フロー」とは,本業の営業活動で現金がどの程度増減したのかということ。

  • 商品を販売して手に入れた現金
  • 材料を仕入れるために支払った現金
  • 広告宣伝費等の販管費の支払に流出した現金
  • 税金支払・保険金受取等 等

 「投資活動によるキャッシュ・フロー」とは,投資によってどの程度現金が増減したかということ。

  • 設備投資
  • 子会社や関連会社等への投資
  • 設備の売却 等

 「財務活動によるキャッシュ・フロー」とは,資金調達と返済でどの程度現金が増減したかということ。

  • 資金調達
  • 返済

 キャッシュ・フロー計算書の下部に「現金及び現金同等物の期首残高」,「現金及び現金同等物の期末残高」とありますが,会計期間の開始時点(=「期首」)で会社に存在しているお金が,営業活動,投資活動,財務活動の結果,どのように増減し,会計期間終了時点(=「期末」)で会社にいくらお金が残っているかということがキャッシュ・フロー計算書の基本的な構造です。

 そして,上記の3種類の活動のお金の流れを大掴みすることで,その企業の経営状況が,攻めているのか,建て直しを図っているのかなど,どのようなフェーズにあるかが分かるようになります。

三種類の活動ごとの説明等

模式図の作成

 キャッシュ・フロー計算書は,期首残高と期末残高,上記3種類の活動のお金の流れをピックアップし,以下のような模式図にして表すと,分かりやすくなります。

 上掲のPKSHA社の(連結)キャッシュ・フロー計算書を模式図にして表してみます。

 PKSHA社は,2018年度,大量の資金の調達に成功していますね。

 このように模式図で表すことで,お金の流れが一目瞭然になります。

 キャッシュ・フロー計算書を読む際は,手書きでもよいので,このような模式図を書いてみると,その会社のお金の動きがよりイメージしやすくなると思います。

各活動におけるお金の流れに対する視点

 では,営業活動,投資活動,財務活動のそれぞれの活動によってお金が増えたり,減ったりすることは何を意味するのでしょうか。

  プラス マイナス
営業活動 本業で資金を獲得 本業で資金が流出
投資活動 設備や株を売却 設備や株へ投資
財務活動 資金を調達 返済

営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動のキャッシュ・フローに関しては,説明するまでもありませんが,営業活動によってお金が増加しているということは,それだけ本業で儲かっているということなので,増加していればしている程よいです。

 そして,営業活動のキャッシュ・フローが上を向いていれば,本業で儲けたお金を新しい投資の財源として使えたり,株主配当等の利益換言の財源にもなります。

 一方,営業活動のキャッシュ・フローがマイナスだと,投資に回していたお金を営業でマイナスになっている分の補填に回さなければならなくなったり,銀行等から借入れを行う等,他の活動で補填しなければならなくなります。

 このようなマイナスの状況が続くと,会社にお金がなくなっていくので,事業基盤の大改革が必要にもなってきます。

 本業で儲かっていないと,他からお金を借り入れることも難しくなりますし,また,投資に回すお金もなくなりますし,営業活動のキャッシュ・フローは,3つの区分の中でも特に重要といわれています。

投資活動によるキャッシュ・フロー

 上記のとおり,投資活動によるキャッシュ・フローは,企業の投資活動により会社に流出、流入した現金の動きを示しています。

 投資活動によるキャッシュ・フローは,一般にマイナスになっている方がよいです。

 マイナスになっているということは, 設備投資や子会社等への投資等,どんどん投資をして事業を拡大しようとしているということを意味するからです。

 逆に,投資活動のキャッシュ・フローがプラスになっている場合は,営業活動による赤字を補填するため,工場を売却したり,子会社等を売却したり,事業を縮小している可能性があります。

 また,投資活動のキャッシュ・フローは実に興味深く,その企業が営業活動や財務活動によって得たお金をどのように使っているかを表しているので,投資活動のキャッシュ・フローを分析することで,その企業の経営方針やその企業が何に関心をもっているのかが分かるようになってきます。

財務活動によるキャッシュ・フロー

 上記のとおり,財務活動によるキャッシュ・フローは,資金調達と返済によるお金の流れを表しています。

 財務活動によるキャッシュ・フローは,資金を調達したらプラス,返済を行ったらマイナスになります。

 なお,企業が上場し,資金調達をした場合,財務活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスとなる場合が多いです。

 財務活動によってお金が増えるのと減るのとどちらが良いかは一概にはいえません

キャッシュ・フローの類型的分析

 以上,各活動によるキャッシュ・フローの増減が何を意味しているのかを説明してきましたが,各活動によるキャッシュ・フローを組み合わせ,類型化することで,その企業がどういった段階にあるかを推測することができるようになります。

 そこで,最後にその類型を説明したいと思います。

 類型は8通りあります。

  • 安定型
  • 治療型
  • 積極型
  • 救済型
  • 健全型
  • リストラ型
  • 勝負型
  • 大幅見直し型

①安定型経営

 安定型は,事業転換や将来の新規投資等に備え,資金を蓄えている可能性がある企業を表しています。

②治療型経営

 治療型は,事業を縮小し,財務体質のスリム化を進めている企業を表しています。

③積極型経営

 積極型は,事業拡大を企図する企業を表しています。

 順調な企業といえますが,資金を大量に投入した新規事業が成功するかがカギとなります。

 上掲のPKSHA社は,この類型に該当しており,比較的順調な企業といえるでしょう。

 ちなみに,ソフトバンクは,この類型の最たる例であり,膨大な資金を投資に回しています。

④救済型経営

 救済型は,本業が不調で,資産の売却や借入れでしか資金を得られず,投資家や金融機関からの借入れでなんとか凌いでいる企業を表しています。

 赤字の本業を支えるために資産を売却したり,借金を行って,何とか食いつないでいる状態であり,倒産間近であると評価されます。

⑤健全型経営

 健全型は,一般に,理想的なキャッシュの流れができている堅実な優良企業と評価される類型です。

⑥リストラ型経営

 リストラ型は,事業が奮わず,銀行等に見放され,融資を引き上げられたことから,資産を売却して何とか食いつないでいる企業を表しています。

 かなり危険な状態にあるといえます。

⑦勝負型経営

 勝負型は,資金繰りが厳しく,体制の立て直しや状況を打破するような新たな策を試みている企業を表しています。

 急成長が期待されている将来有望な企業も,この類型に該当することが多いです。

 2018年度や2019年度のメルカリがこの類型に該当します。

⑧大幅見直し型経営

 大幅見直し型は,蓄えていた資金を切り崩して再起を図っている企業を表しています。

 この類型は,過去に実績があり,十分な資金力がある企業が多そうです。

おわりに

 以上,キャッシュ・フロー計算書について説明してきましたが,キャッシュ・フロー計算書がどのような仕組みになっているか,イメージを掴むことができたでしょうか。

 キャッシュ・フロー計算書は,上場企業のIRページ等で閲覧することができるので,是非,一度ご自身で気になる企業のキャッシュ・フロー計算書をご覧になって,上記の8類型のいずれに当てはまるか検討してみてください。

 もし質問等があれば,当サイトの問い合わせフォームTwitter質問箱),Instagram等で受け付けているので,お気軽にどうぞ!

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