ゴーン元会長のレバノン入国に関する法律上の問題とこれからどうなるのかをわかりやすく説明!

ポイント

・ゴーン元会長は,裁判所が保釈を認める代わりに定めた海外渡航禁止の条件に違反した。
・ゴーン元会長からは保釈保証金計15億円を没取することができるが,ゴーン元会長を日本に連れ戻し,身体拘束するのは難しい。

はじめに

ゴーン元会長、無断出国か レバノンに入国(写真=ロイター)
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が日本を出国し、中東レバノンに入ったことが31日、分かった。元会長は保釈条件で海外渡航が禁じられており、無断出国とみられる。日本とレバノンの間に犯罪人引

カルロス・ゴーン元会長は,2019年4月下旬に保釈されました。

同氏の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と会社法違反(特別背任)の罪に関する公判はまだ係属中です。

それにもかかわらず,同氏は,同年12月29日,日本を出国し,レバノンに入国しました。

このことに法律上どのような問題があるのでしょうか。

法律上問題があるとすれば,同氏はどうなるのでしょうか。

法律上の問題

ゴーン元会長が保釈されるにあたって,東京地裁から海外渡航禁止の条件が付されていました。

被告人の逃亡等を防止するため,このような条件が付されることは一般的です(刑事訴訟法§93Ⅲ)。

刑事訴訟法§93(保証金額,保証の条件)

3項:保釈を許す場合には,被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。

裁判所の許可があれば,保釈条件が途中で変更されることはありますが,今回,海外渡航禁止の条件が撤廃・変更されるなどということはなかったとのことです。

したがって,今回,ゴーン元会長は,裁判所の定めた海外渡航禁止の条件に違反したということになります。

✥ 参考
山中理司「外国人被告人の出国確認留保の通知に係る事務の取扱いについて(平成12年8月28日付の最高裁判所刑事局長,家庭局長通達)」(2019/12/31)

ゴーン元会長のこれから

では,被告人が裁判所の定めた条件に違反したとき,被告人の処遇はどのようになるのでしょうか。

まず,裁判所は,決定で保釈保証金の全部又は一部を没取した上で,保釈を取り消すことができます(刑事訴訟法§96Ⅰ,Ⅱ)。

刑事訴訟法§96(保釈等の取消し,保証金の没取)

1項:裁判所は,左の各号の一にあたる場合には,検察官の請求により,又は職権で,決定を以て保釈…を取り消すことができる。
①~④ (省略)
 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
2項:保釈を取り消す場合には,裁判所は,決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。

ゴーン元会長は,計15億円もの保釈保証金を納めて保釈されました。

今回,ゴーン元会長は,日本では公正な裁判を受けることができないとして,日本を出国しました。すなわち,裁判の放棄であり,逃亡に等しいといえます。

したがって,恐らくゴーン元会長は,この15億円の全部又は一部を裁判所に没取され,かつ,保釈も取り消されることになるでしょう。

そして,保釈が取り消された場合,ゴーン元会長は,再び刑事施設等に収容されることになります(刑事訴訟法§98Ⅰ,刑事収容施設法§286)。

刑事訴訟法§98(保釈の取消し等と収容の手続)

1項:保釈…を取り消す決定があったとき…は,検察事務官,司法警察職員又は刑事施設職員は,検察官の指揮により,…保釈…を取り消す決定の謄本…を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。

したがって,ゴーン元会長が日本に帰国すれば,同氏は刑事施設等に収容されることになるでしょう。

もっとも,日本とレバノンの間には犯罪人引渡し条約がないため,同氏がレバノンにいる間,同氏を日本に連れ戻す権限は我が国の刑事司法にはなく,同氏から保釈保証金を没取することができるにとどまります。

また,同氏はレバノンにも国籍をもつ多重国籍者なので,同氏をレバノンから日本に連れ戻そうとする場合,同氏の身柄の引渡しは外交ルートを通じた交渉によることになります。

同氏が日本に戻ってくるとは考え難いので,同氏の公判はうやむやのまま終わることになりそうです。

 

<追記>

 2019年12月31日,東京地裁は保釈を取り消す決定をし,前記15億円は全額没取される見通しであるとのことです。

ゴーン被告の保釈取り消す決定 東京地裁 保釈金15億円没収へ | NHKニュース
ことし4月に保釈され中東のレバノンに出国したという声明を発表した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告について、東京地…

 また,ゴーン元会長は,地方空港から,楽器箱に隠れることによって出国に成功したとの情報も入ってきています。

ゴーン元会長「楽器箱に隠れ出国」 現地メディア報道(写真=共同)
レバノンの主要テレビMTV(電子版)は31日、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が楽器の箱に隠れ、日本の地方空港から出国したと報じた。民間警備会社のようなグループの支援を受けたとしている。情報源は明ら

 

日本が犯罪人引渡し条約を締結している国は?

 日本が犯罪人引渡し条約を締結している国は,アメリカ韓国の2か国のみです。

✥ 参考
ゴーン元会長の声明全文(2019/12/31)

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