【民裁起案】事実認定の判断枠組み

事実認定の判断枠組み

 本稿では,民裁起案における事実認定の判断枠組みについて説明します(ジレカンの記載は少し分かりづらいです)。

 まず,判断枠組みは4類型あり,次のとおりです。

【第1類型】直接証拠である類型的信用文書があり,その成立に争いがない場合

【第2類型】直接証拠である類型的信用文書があり,その成立に争いがある場合

【第3類型】直接証拠である類型的信用文書はないが,直接証拠である供述証拠がある場合

【第4類型】直接証拠である類型的信用文書も直接証拠である供述証拠もない場合

 民裁起案では,この4類型を記憶することは必須であり,起案でも,事実認定を行う前に,どの判断枠組みに則って事実認定を行うのかを明記することが求められます

4類型の選別方法

 次に,その要証事実が上記4類型のいずれに則って検討されるべきものかを決定するための思考プロセスをフローチャートにしましたので,ご覧ください。

 まず考えるべきは,直接証拠があるかどうかです。直接証拠があるかどうかは,①問題となっている要証事実の体験者が,②要証事実そのものについて記載又は供述した証拠が存在するかどうかによって判断します。①の要素を「体験者性」,②の要素を「事実対応性」などと称することもあります。そして,そのような証拠が存在しなければ,第4類型に則って,間接事実の積み上げにより,要証事実の存否を判断することになります。

 他方,そのような証拠が存在するのであれば,次に,その直接証拠が類型的信用文書に当たるかどうかを判断することになります。類型的信用文書に当たるかどうかは,その証拠の記載や体裁等の外形的な部分から判断することになります。具体的には, ㋐処分証書(意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合のその文書), ㋑紛争顕在化前に作成された文書,㋒紛争当事者と利害関係のない者が作成した文書,㋓事実があった時点に近い時期に作成された文書,㋔記載行為が習慣化されている文書,㋕自己に不利益な内容を記載した文書といった事情の有無を総合的に考慮して,類型的信用文書該当性を判断することになります。なお,類型的信用文書に当たるとされる代表的な例は契約書解除通知書遺言書です。

 直接証拠である類型的信用文書があると認められた場合は,次にその文書の成立の真正に争いがあるかどうかをみます。成立の真正が争われている場合は,その文書が真正に成立したものかどうかの判断を示す必要があります(第2類型)。

 真正に成立したものでない場合は,形式的証拠力を欠くので,その文書は証拠から排除されることになります(その証拠は事実認定の基礎とすることができなくなる)。

 他方,その文書が真正に成立したものと認められる場合や,成立の真正に争いがない場合(第1類型)は,最後に実質的証拠力の有無を検討します。その文書が処分証書(意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合のその文書)であれば,そのままその記載内容どおりの事実を認定することができます(つまり,実質的証拠力の有無の検討をスキップすることができます)。しかし,例えば,類型的な信用性が認められる文書が報告文書である場合(ex.領収書)については,直ちにその記載内容どおりの事実を認定してもよいということになりません。すなわち,その記載内容どおりの事実を認定すべきでないといえるような「特段の事情」があるかどうかを検討することが必要です。処分証書と報告文書でこのような違いがあるのは,処分証書については,その文書そのものの中に法律行為が包含されており,この法律行為が文書を離れて存在しないのに対し,報告文書の場合はそのような関係がないため,「真正に成立した文書の存在=要証事実である法律行為の存在」という等式が成り立たないからであると思われます。したがって,「特段の事情」がないと認められてはじめて,その文書の記載から要証事実の存在を認定することができます。

 話が戻りますが,直接証拠である類型的信用文書がない場合は,直接証拠である供述証拠があるかどうかを探します。直接証拠である供述証拠がある場合は,その供述の信用性を検討することになります(第3類型)。供述の信用性を検討するにあたっては,㋐供述者の利害関係,㋑供述過程(知覚→記憶→表現→叙述),㋒供述態度,供述内容の合理性・一貫性・具体性,㋓動かし難い事実との整合性という着眼点に着目することが有益であり,中でも,㋓動かし難い事実との整合性は特に重要です。そして,供述の信用性が肯定されれば,その供述内容どおりの事実を認定することができます。

 ところで,供述の信用性を検討するにあたっては,漫然とその供述者の一連の供述が信用できるかどうかを検討するのではなく,一連の供述の中から,要証事実の存否に関する供述部分だけをピックアップした上で,その供述部分が信用できるかどうかを検討することが必要です。

 ちなみに,直接証拠である供述証拠が紛争当事者の供述だけしかない場合,司法研修所「事例で考える民事事実認定」の51頁には,当事者供述は,実務上,主張に準ずるものとして扱うため,第3類型ではなく,第4類型に則って検討することが多い旨記載されています。しかし,司法研修所では,この場合も,第3類型に則るよう教わりました。つまり,当事者の要証事実に関する供述の信用性を検討し,信用性が肯定されれば,この当事者供述から直接に要証事実の存在を認定することになります。

おわりに

 以上,民裁起案における事実認定の判断枠組みについて説明してきましたが,第4類型の間接事実の積み上げであろうと,第1類型の特段の事情の有無の検討であろうと,第2類型の成立の真正の検討であろう,第3類型の信用性の検討であろうと,基本的にその中でやることは間接事実又は補助事実の積み上げであり,やることに大差はありません。

 しかし,判断枠組みを間違えると,それぞれ着目すべきポイントが異なってくるため,痛手になります。したがって,判断枠組みは正確に押さえる必要があります。

 

● 参考文献
司法研修所「事例で考える民事事実認定」

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