【刑裁起案】頻出の手続問題

 刑裁起案では,手続に関する問題も出題されます。刑事裁判の手続といえば,非常に複雑で多種多様な手続がありますが,その中でも,次の手続は頻出であるように思われます。

保釈

 保釈には,権利保釈(刑訴§89),裁量保釈(刑訴§90),義務的保釈(刑訴§91)とがありますが,刑裁起案で出題頻度が多いのは,圧倒的に権利保釈裁量保釈です。

 回答にあたり,特に注意すべき点を挙げてみたいと思います。

1 権利保釈(刑訴§89)

(1) 検察官が,例えば,刑訴§89①と④に該当する旨主張している場合は,裁判官は,刑訴§89①と④の両方について判断を示さなければなりません

(2) 刑訴89§④の「罪証隠滅のおそれ」は,❶罪証隠滅の対象となる事実,❷罪証隠滅の態様,❸罪証隠滅の客観的可能性,❹罪証隠滅の主観的可能性を検討する必要があります。❶については,罪証隠滅の対象となる証拠を摘示するのではなく,罪証隠滅の対象となる「事実」を摘示しなければならないことに注意する必要があります。

2 裁量保釈(刑訴§90)

 裁量保釈の判断では,刑訴§89の③や④で逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがある(「有無」)と判断されたことを前提として,それらの「程度」を判断することになります。したがって,裁量保釈の考慮要素として逃亡の危険性が高いことや罪証隠滅の危険性が高いことを挙げる場合には,その前提として,権利保釈の判断の中で,逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあることを認定しておかなければなりません

公判前整理手続終了後の証拠請求

 例えば,検察官が,公判前整理手続でXさんを証人として証拠請求しなかったのに,公判前整理手続が終了し,さらに証人尋問や被告人質問が終わった後に,やっぱりこのままだと立証が足りてない気がするから,Xさんも証拠請求したいと言ってきた場合に,この証拠請求が認められるのかという問題です。

 この問題では,主として,この証拠請求につき「やむを得ない事由」(刑訴§316の31Ⅰ)が認められるかどうかが問題となります(「やむを得ない事由」が認められれば,直ちに証拠採用というわけではなく,「裁判所が,必要と認めるときに,職権で証拠調べをする」ことができるので(同条Ⅱ),さらに証拠調べの必要性を検討することになります)。

✥ 「やむを得ない事由」の意義

 「やむを得ない事由」は,①証拠は存在していたが,それを知らなかったことがやむを得なかった場合,②証拠の存在は知っていたが,物理的にその証拠調べ請求が不可能であった場合,③証拠の存在は知っており,証拠調べ請求も可能であったが,公判前整理手続における相手方の主張や証拠関係等から,証拠調べ請求をする必要がないと考えたことに十分な理由があったと考えられる場合などに認められると解されています。

 そして,③については,㋐新たな証拠を請求するに至った経緯,㋑新たな証拠請求が相手方当事者に及ぼす影響や審理予定に与える影響の大小,㋒その証拠が証明しようとする事実が事件の帰趨に与える影響の大小,㋓事案の重大性等を考慮して判断することになります(有力説)。

証拠の採否(関連性・必要性)

 証拠の関連性・必要性は,当該証拠の立証事項の推認力(意味合い・重み)等を踏まえて,検討することが求められます。

伝聞証拠

 非伝聞,心理状態を述べる発言,再現実況見分調書(最決平成17年9月27日),供述不能要件あたりがよく出題されるのではないかと思います。

書面,物等を示してする尋問

 特に刑訴規§199の10~12。

 記憶喚起に関する刑訴規§199の11Ⅰで,供述録取書は記憶喚起のために示すことができない旨が括弧書で定められていることには注意してください。

 

● 参考文献

司法研修所刑事裁判教官室「プロシーディングス刑事裁判」

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