【2020年民法改正】根保証【勉強ノート】

改正のポイント

 個人保証人保護のため,①極度額に関する規律や②一定の元本確定事由に関する規律の対象が貸金等根保証契約以外の個人根保証契約一般に拡大されました。

 また,③極度額の定めがない根保証契約の保証人である法人が主債務者に対して取得する求償権を個人が保証する場合に関する規律の対象も根保証契約一般に拡大されました。

極度額に関する規律の対象の拡大

旧法 新法

【465条の2】(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
1項:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。

2項:貸金等根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。

3項:第四百四十六条第二項及び第三項の規定は,貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

【465条の2】(個人根保証契約の保証人の責任等)
1項:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。

2項:個人根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。

3項:第四百四十六条第二項及び第三項の規定は,個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

 旧法§465の2Ⅰ,Ⅱでは,保証人が個人であって,金銭の貸渡し等によって負担する債務を主債務の範囲に含む貸金等根保証契約についてのみ,保証すべき債務が保証契約の締結後に追加されて保証人の責任が過大なものとなる可能性があることから,極度額を定めることを要求していました。

 しかし,このような個人である保証人がその予想を超えた責任を負わされる危険は,貸金等根保証契約以外の根保証契約についても生じ得ます。

 したがって,新法では,極度額に関する規律の対象を保証人が個人である根保証契約(個人根保証契約)一般に拡大することとしました(新法§465の2Ⅰ,Ⅱ)。

 なお,旧法と同様に,新法でも,個人根保証契約は,保証契約を締結する時点で確定的な金額の極度額を書面又は電磁的記録によって定めておかなければ,無効となります(同条Ⅲ・新法§446Ⅱ,Ⅲ)。

元本確定期日に関する規律を個人根保証契約一般に拡大しなかった理由

 新法では,元本確定期日に関する規律の対象が,貸金等根保証契約以外の個人根保証契約一般に拡大されておらず,旧法の規律がそのまま維持されています(新法§465の3参照)。その理由は,前述のとおり,極度額に関する規律が個人根保証契約一般に拡大されており,それをもって個人保証人が過大な責任を負わされる危険を防止することができると考えたからです。

元本確定事由に関する規律の対象の拡大

旧法 新法
【465条の4】(貸金等根保証契約の元本の確定事由)
次に掲げる場合には,貸金等根保証契約における主たる債務の元本は,確定する。
一 債権者が,主たる債務者又は保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
二 主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

【465条の4】(個人根保証契約の元本の確定事由)
1項:次に掲げる場合には,個人根保証契約における主たる債務の元本は,確定する。 ただし,第一号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が,保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

2項:前項に規定する場合のほか,個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は,次に掲げる場合にも確定する。ただし,第一号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が,主たる債務者の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 新法では,㋐債権者が,主債務者の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てた場合と,㋑主たる債務者が破産手続開始決定を受けた場合を除き,元本確定事由に関する規律の対象が個人根保証一般に拡張されました(新法§465の4Ⅰ,Ⅱ)。

 ㋐と㋑が除かれた理由は,次のように説明されています。

 典型例とされる不動産の賃借人の債務を主債務の範囲に含む個人根保証契約を例に挙げます。仮に,㋐又は㋑の事由によって元本が確定してしまうとすると,賃貸借契約は主債務者である賃借人の破産等によっても終了しないため,賃貸人は,保証契約の存在を前提として賃貸借契約を締結したにもかかわらず,確定以後は保証がない状態で,資力のない主債務者に賃貸し続けなければならなくなります。

 これでは賃貸人に酷なので,㋐と㋑については,個人根保証一般に拡張しないこととしました。

  旧法 新法
個人貸金等根保証 個人貸金等根保証 個人根保証
強制執行等 主債務者・保証人
(旧法§465の4①)
主債務者
(新法§465の4Ⅱ①)
保証人
(新法§465の4Ⅰ①)
破産手続開始決定 主債務者・保証人
(旧法§465の4②)
主債務者
(新法§465の4Ⅱ②)
保証人
(新法§465の4Ⅰ②)
死亡 主債務者・保証人
(旧法§465の4③)
  主債務者・保証人
(新法§465の4Ⅰ③)

根保証契約の保証人である法人が主債務者に対して取得する求償権を個人が保証する場合

旧法 新法
【465条の5】(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権)
保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて,第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないとき,元本確定期日の定めがないとき,又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは,その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は,その効力を生じない。

【465条の5】(保証人が法人である根保証契約の求償権)
1項:保証人が法人である根保証契約において,第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは,その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は,その効力を生じない。

2項:保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて,元本確定期日の定めがないとき,又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは,その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は,その効力を生じない。主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も,同様とする。

3項:前二項の規定は,求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には,適用しない。

 旧法では,保証人が法人である貸金等債務の根保証契約について極度額の定めがないときは,その根保証契約に基づいて発生する求償債務を個人が保証する保証契約が締結されたとしても,その保証契約は効力を生じないとされていました(旧法§465の5)。

 新法では,この規律の対象が,貸金等根保証契約以外の根保証契約一般に拡張されました(新法§465の5Ⅰ・Ⅲ)。

 個人保証人が予想を超える過大な責任を負う危険が生じ得ることは貸金等根保証契約に限られないからです。

確認問題〔根保証〕

新法に基づいて回答してください!(全3問)

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