【2020年民法改正】消費貸借①―諾成的消費貸借契約【勉強ノート】

改正のポイント

 判例上認められていた諾成的消費貸借契約が明文化されるとともに,その成立要件として書面性が要求されたり,目的物の交付受けるまでは,借主は契約を解除することができる(ただし,貸主に損害が発生している場合には,借主は賠償の責めを負い得る)との規定が新設されるなどの改正が行われています。

諾成的消費貸借契約の成立要件

変更点

旧法 新法
規定なし

【587条の2】(書面でする消費貸借等)
1項:前条の規定にかかわらず,書面でする消費貸借は,当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し,相手方がその受け取った物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって,その効力を生ずる。

2・3項:(省略)

4項:消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは,その消費貸借は,書面によってされたものとみなして,前三項の規定を適用する。

 旧法では,消費貸借契約は,金銭等の目的物が相手方に交付されたときに成立する要物契約であるとしていましたが,判例(最判昭和48年3月16日)は,当事者間の合意のみで貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約(諾成的消費貸借契約)を認めていました。

 そこで,新法では,諾成的消費貸借契約を明文化しました(新法§587Ⅰ,Ⅳ)。

 ただし,判断を慎重ならしめ,軽率な契約の成立を防ぐため,諾成的消費貸借契約は,消費貸借の合意に書面等がある場合に限ってその成立が認められています(同項)。

要件事実

諾成的消費貸借契約に基づく目的物引渡請求権

諾成的消費貸借契約に基づく貸金返還請求権

 要物契約である消費貸借契約(新法§587)と違って,「金銭交付が契約に基づくこと」が要件事実になることには留意してください。

 要物契約の場合,合意も目的物交付も契約の成立要件であって,合意が目的物交付の前提関係にはありませんが,諾成契約の場合は,合意が目的物交付の前提関係になるからです。

借主の解除権

変更点

旧法 新法
規定なし

【587条の2】(書面でする消費貸借等)
1項:(省略)

2項:書面でする消費貸借の借主は,貸主から金銭その他の物を受け取るまで,契約の解除をすることができる。この場合において,貸主は,その契約の解除によって損害を受けたときは,借主に対し,その賠償を請求することができる。

3・4項:(省略)

 諾成的消費貸借契約が成立したとしても,借主は,目的物を受け取るまでは,当該契約を解除することができます(新法§587の2Ⅱ前段)。

 契約成立後目的物交付前に,借主において目的物を借りる必要性が消失した場合に,借主に,契約の拘束力から解放される余地を与える趣旨です。

 ただし,貸主と借主の公平の見地から,借主の解除権行使により,貸主に損害が発生した場合には,貸主は借主に対して損害賠償請求をすることができます(同項後段)。

 なお,ここでの損害は,貸主が金銭等を調達するために負担した費用相当額等にとどまり,現実に目的物の交付を受けていないにもかかわらず弁済期までの利息相当額が損害となることはないと解されています。

要件事実(諾成的消費貸借契約解除に基づく損害賠償請求権)

借主又は貸主が破産手続開始決定を受けた場合

旧法 新法
規定なし

【587条の2】(書面でする消費貸借等)
1・2項:(省略)

3項:書面でする消費貸借は,借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは,その効力を失う。

4項:(省略)

 旧法下での一般的な解釈に従い,借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは,諾成的消費貸借契約は,その効力を失う旨の規定が新設されました(新法§587の2Ⅲ)。

 同項の趣旨は,①借主破産の場合には,信用を喪失した借主からの返済は期待できず,貸主に対し貸すことを強制するのは酷であること,②貸主破産の場合には,借主は破産債権者として配当を受ける権利を有するだけであって,それでは契約の目的を達成できないことにあります。

確認問題〔消費貸借①―諾成的消費貸借契約〕

新法に基づいて回答してください!(全3問)

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