【2020年民法改正】売買⑤―買戻し【勉強ノート】

買戻権行使時,売主が返還しなければならない金銭の範囲

旧法 新法
【579条】(買戻しの特約)
不動産の売主は,売買契約と同時にした買戻しの特約により,買主が支払った代金及び契約の費用を返還して,売買の解除をすることができる。この場合において,当事者が別段の意思を表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
【579条】(買戻しの特約)
不動産の売主は,売買契約と同時にした買戻しの特約により,買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては,その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して,売買の解除をすることができる。この場合において,当事者が別段の意思を表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

 旧法§579前段は,売主が買戻権を行使する際に,売主が返還しなければならない金銭の範囲を「買主が支払った代金及び契約の費用」と定めており,これは強行規定であると解されていました。

 そのため,実務では,この規定の適用を避けるために再売買の予約が用いられていました。

 そして,売主が返還しなければならない金銭の範囲を強行法的に「買主が支払った代金及び契約の費用」に固定する実益は乏しく,合理性がないと指摘されていました。

 そこで,今回の改正では,実務上も買戻し制度を使いやすいものとするために,返還しなければならない金銭の範囲について任意規定とし,当事者の合意で定めることができるとしました(新法§579前段)。

買戻しの特約の対抗力

旧法 新法

【581条】(買戻しの特約の対抗力)
1項:売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは,買戻しは,第三者に対しても,その効力を生ずる。

2項:登記をした賃借人の権利は,その残存期間中一年を超えない期間に限り,売主に対抗することができる。ただし,売主を害する目的で賃貸借をしたときは,この限りでない。

【581条】(買戻しの特約の対抗力)
1項:売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは,買戻しは,第三者に対抗することができる。

2項:前項の登記がされた後に第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は,その残存期間中一年を超えない期間に限り,売主に対抗することができる。ただし,売主を害する目的で賃貸借をしたときは,この限りでない。

1項

 売買契約と同時に登記をした買戻しは,単に効力を生ずるにとどまらず,当該登記後に生じた第三者に対抗することができることを明確にしました(新法§581Ⅰ)。

2項

 新法§605の2が新設されたことに伴い,同条「1項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利」に関する規定である旨が明示されました(新法§581Ⅱ)。

 これにより,新法§581Ⅱが,買戻しの特約の登記後に賃借権について対抗要件を具備した賃借人の権利を保護するものであることが明確にされました。

新法§605の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)

 前条,借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する。
2   前項の規定にかかわらず,不動産の譲渡人及び譲受人が,賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは,賃貸人たる地位は,譲受人に移転しない。この場合において,譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは,譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は,譲受人又はその承継人に移転する。
3   第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない。
   第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは,第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は,譲受人又はその承継人が承継する。

確認問題

 特になし。

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