【2020年民法改正】有価証券【勉強ノート】

変更点

 有価証券とは,財産的価値ある権利を表章する証券であって,権利の行使及び譲渡に証券が必要とされるものをいいます(早川徹「手形・小切手法」(新世社・2007年)23頁)。

 株券,新株予約権証券,社債券,貨物引換証,倉庫証券,船荷証券,抵当証券等が有価証券に当たります。

 新法では,旧民法・旧民法施行法・旧商法等に分散していた証券的債権や有価証券に関する規定(旧民法§86Ⅲ,§363,§365,§469~473,旧商法§516Ⅱ,§517~519,旧民法施行法§57)は全て削除し,それらの実質的な内容について一部修正・追加をしつつも,基本的には維持した上で,一体的な有価証券に関する規定を新設しています(新法第3編第1章第7節)。

 なお,証券的債権に該当するものは現実にはほとんど存在していなかったため,証券的債権に関する規定は完全に削除され,新法には存在しません。

有価証券の分類

 新法では,有価証券を下図のように分類しています。

 指図証券,記名式所持人払証券,その他の記名証券,無記名証券のそれぞれの意義,具体例は次のとおりです。

有価証券 意義 具体例
指図証券 証券上指名された者又はその者が証券上の記載によって指名した者(当該指名された者が更に指名した者を含む。)を権利者とする有価証券 裏書によって譲渡される手形や記名式小切手
記名式所持人払証券 権利者を指名する記載がされている証券であって,その証券上指名された者又は証券の所持人に弁済をすべき旨が付記されているもの 記名式持参人払小切手
その他の記名証券 権利者を指名する記載がされている証券であって,指図証券及び記名式所持人払証券以外のもの 裏書禁止小切手
無記名証券 証券上特定の権利者を指名する記載がされておらず,その所持人が権利者としての資格を持つ有価証券 無記名式小切手

新設された条文

指図証券

 指図証券に関して新設された規定は次のものです。

【520条の2】(指図証券の譲渡)

指図証券の譲渡は,その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ,その効力を生じない。

 旧法§469では,指図債権の譲渡は対抗要件とされていましたが,新法では,効力要件とされています。

 有価証券は,証券と権利が結合したものという性質を有しており,証券に化体した債権は,証券の移転(交付)とともに移転するものであり,証券と分離して権利の帰属を観念することは適当でないと考えられたためです。

【520条の3】(指図証券の裏書の方式)

指図証券の譲渡については,その指図証券の性質に応じ,手形法(昭和七年法律第二十号)中裏書の方式に関する規定を準用する。

【520条の4】(指図証券の所持人の権利の推定)

指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは,その所持人は,証券上の権利を適法に有するものと推定する。

【520条の5】(指図債権の善意取得)

何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において,その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは,その所持人は,その証券を返還する義務を負わない。ただし,その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは,この限りでない。

【520条の6】(指図証券の譲渡における債務者の抗弁の制限)

指図証券の債務者は,その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き,その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。

【520条の7】(指図債権の質入れ)

第五百二十条の二から前条までの規定は,指図証券を目的とする質権の設定について準用する。

【520条の8】(指図債権の弁済の場所)

指図証券の弁済は,債務者の現在の住所においてしなければならない。

【520条の9】(指図債権の提示と履行遅滞)

指図証券の債務者は,その債務の履行について期限の定めがあるときであっても,その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う。

【520条の10】(指図証券の債務者の調査の権利等)

指図証券の債務者は,その証券の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが,その義務を負わない。ただし,債務者に悪意又は重大な過失があるときは,その弁済は,無効とする。

【520条の11】(指図証券の喪失)

指図証券は,非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。

【520条の12】(指図証券喪失の場合の権利行使方法)

金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において,非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは,その債務者に,その債務の目的物を供託させ,又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる。

記名式所持人払証券

 記名式所持人払証券に関して新設された規定は次のものです。

【520条の13】(記名式所持人払証券の譲渡)

記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう。以下同じ。)の譲渡は,その証券を交付しなければ,その効力を生じない。

【520条の14】(記名式所持人払証券の所持人の権利の推定)

記名式所持人払証券の所持人は,証券上の権利を適法に有するものと推定する。

【520条の15】(記名式所持人払証券の善意取得)

何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合において,その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは,その所持人は,その証券を返還する義務を負わない。ただし,その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは,この限りでない。

【520条の16】(記名式所持人払証券の譲渡における債務者の抗弁の制限)

記名式所持人払証券の債務者は,その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き,その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。

【520条の17】(記名式所持人払証券の質入れ)

第五百二十条の十三から前条までの規定は,記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用する。

【520条の18】(指図証券の規定の準用)

第五百二十条の八から第五百二十条の十二までの規定は,記名式所持人払証券について準用する。

その他の記名証券

 その他の記名証券に関して新設された規定は次のものです。

【520条の19】

1項:債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券及び記名式所持人払証券以外のものは,債権の譲渡又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い,かつ,その効力をもってのみ,譲渡し,又は質権の目的とすることができる。

2項:第五百二十条の十一及び第五百二十条の十二の規定は,前項の証券について準用する。

無記名証券

 無記名証券に関して新設された規定は次のものです。

【520条の20】

第二款(記名式所持人払証券)の規定は,無記名証券について準用する。

特別法との関係

 新法における有価証券に関する規定の特別法として,手形法小切手法が挙げられます。

 このような特別法が存在する場合には,特別法が優先的に適用されます。

確認問題

 特になし。

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