【2020年民法改正】危険負担【勉強ノート】

改正のポイント

 危険負担に関しては,債権者主義規定(旧法§534,§535)が廃止されたり,危険負担の効果が「債権者の反対給付債務の消滅」から「債権者への反対給付債務の履行拒絶権の付与」に改められるなどの改正が行われました。

債権者主義規定の削除

旧法 新法

【534条】(債権者の危険負担)
1項:特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において,その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,その滅失又は損傷は,債権者の負担に帰する。

2項:不特定物に関する契約については,第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から,前項の規定を適用する。

削除

【535条】(停止条件付双務契約における危険負担)
1項:前条の規定は,停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には,適用しない。

2項:停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは,その損傷は,債権者の負担に帰する。

3項:停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において,条件が成就したときは,債権者は,その選択に従い,契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては,損害賠償の請求を妨げない。

削除

 旧法では,債務者主義を原則とし(旧法§536Ⅰ),例外的に債権者主義を採用する構造が採られていました(旧法§534,§535)。

 ところが,新法では,債権者主義を定めた規定(旧法§534,§535)は削除されました。

 ただし,目的物の滅失等についての危険の移転については,売買に関する新法§567(新法§559において他の有償契約に準用)に規定が新設されています。

参考―新法567(目的物の滅失等についての危険の移転)

1項:売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において,その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,買主は,その滅失又は損傷を理由として,履行の追完の請求,代金の減額の請求,損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において,買主は,代金の支払を拒むことができない。

2項:売主が契約の内容に適合する目的物をもって,その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず,買主がその履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し,又は損傷したときも,前項と同様とする。

危険負担の効果の見直し

旧法 新法

【536条】(債務者の危険負担等)
1項:前二条に規定する場合を除き,当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を有しない。

2項:債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。この場合において,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者に償還しなければならない。

【536条】(債務者の危険負担等)
1項:当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる。

2項:債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができない。この場合において,債務者は,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者に償還しなければならない。

 旧法では,債権者は,債務の履行が不能となった場合には,債務者に帰責事由があれば契約の解除により(旧法§543等),双方に帰責事由がなければ危険負担により(旧法§536Ⅰ),反対給付債務が消滅するとされていました。

 ところが,新法では,債権者が契約を解除するのに債務者の帰責事由の存在が要求されなくなりました(新法§541ないし§543)。

 そうすると,旧法§536Ⅰを維持すると,双方に帰責事由がない場合について,反対給付債務の消滅という同じ効果を生じさせる制度が重複し,矛盾が生じることになります。

 そこで,旧法下で,反対給付債務の当然消滅という効果が生じていた場面については,新法では,反対給付債務の履行拒絶権の付与という効果を生じさせるにとどめ,制度間の矛盾を解消しました(新法§536)。

 そうすると,債権者は,債務者に帰責事由がない場合には,新法§536Ⅰに基づき反対給付債務の履行を拒絶することができますし,契約を解除することにより,反対給付債務を確定的に消滅させることもできます

履行不能の原因 旧法 新法
当事者双方に
帰責事由なし
債権者の反対給付債務は当然に消滅(旧法§536Ⅰ)。 債権者の反対給付債務は当然には消滅しない。ただし,債権者は履行を拒絶できる(新法§536Ⅰ)。
●債権者が反対給付債務を消滅させるためには,契約を解除する必要あり(新法§542Ⅰ①)。
債権者に
帰責事由あり
債権者の反対給付債務は消滅せず,債権者は履行を拒絶できない。ただし,債務者は,自己の債務を免れたことによって得た利益を債権者に償還する必要あり(旧法§536Ⅱ)。 同左(新法§536Ⅱ)
債務者に
帰責事由あり
●債権者の反対給付債務は当然には消滅しない。
●債権者が反対給付債務を消滅させるためには,契約を解除する必要あり(旧法§543本文)。
同左(新法§542Ⅰ①)

確認問題〔危険負担〕

新法に基づいて回答してください!(全3問)

 

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