【2020年民法改正】債権譲渡③―異議をとどめない承諾【勉強ノート】

異議をとどめない承諾による抗弁切断の制度の廃止

旧法 新法

【468条】(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
1項:債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において,債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し,譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。

2項:譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは,債務者は,その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

【468条】(債権の譲渡における債務者の抗弁)
1項: 債務者は,対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2項:第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については,同項中「対抗要件具備時」とあるのは,「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし,第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については,同項中「対抗要件具備時」とあるのは,「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

 新法では,異議をとどめない承諾の制度を廃止し(新法§468参照),債務者が譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなる(抗弁の切断)のは,債務者が抗弁を放棄する旨の意思表示をした場合に限ることとしました。

 このような異議をとどめない承諾による抗弁切断の制度を廃止したのは,債権が譲渡されたことを認識した旨を債務者が通知しただけで抗弁の喪失という債務者にとって予期しない効果を生ずるのは債務者保護の観点から妥当でない一方,譲受人に対し,債権を譲り受けるにあたり,債務者が抗弁を放棄する旨の意思表示をしたかどうかを確認する負担を課しても酷とはいえないからです。

 以上のとおり,異議をとどめない承諾による抗弁切断の制度が廃止され,抗弁切断の効果が生じるか否かは,意思表示一般の規律に基づき,債務者による抗弁の放棄の意思表示があったかどうかという観点から判断されることになりました。

 そして,債務者による抗弁の放棄の意思表示については,書面性等の方式要件は特に課されてはいませんが,無用の紛争を防止するため,債権者において,抗弁を特定し,特定された抗弁を放棄する旨を明確に記載した書面をもって債務者から放棄を得ることが必要とも指摘されています。

確認問題

 特になし。

タイトルとURLをコピーしました