【2020年民法改正】賃貸借①―短期賃貸借・賃貸借の存続期間の上限等【勉強ノート】

改正のポイント

 賃貸借に関する改正点は多岐にわたっていますが,判例や実務の実情等に合わせて規定内容を見直したに過ぎないものも多いため,旧法下での運用をそこまで大きく変えるものではありません。なので,実質的に旧法下の運用を反映させたに過ぎないものについてサラッと流し,旧法下での運用を変更するものになるべくフォーカスして解説していきたいと思います。

賃貸借の意義

旧法 新法
【601条】(賃貸借)
賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。
【601条】(賃貸借)
賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって,その効力を生ずる。

 賃借人が賃貸借終了により賃借物を返還することは賃貸借契約の本質的要素であることから,新法§601では,「及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還すること」との文言を加えることにより,契約終了時における賃借物の返還が賃貸借の合意内容であることを明確化しました。

短期賃貸借

旧法 新法
【602条】(短期賃貸借)
処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には,次の各号に掲げる賃貸借は,それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月
【602条】(短期賃貸借)
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には,次の各号に掲げる賃貸借は,それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。 契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,当該各号に定める期間とする。
一  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二  前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三  建物の賃貸借 三年
四  動産の賃貸借 六箇月

処分につき行為能力の制限を受けた者又は」の削除

 旧法§602の「処分につき行為能力の制限を受けた者又は」との文言が,新法§602では削除されています。

 削除された理由は,本来,制限行為能力者が長期・短期を問わず賃貸借をすることができるか否かは,行為能力制度に関する規定(民§5,§9,§13Ⅰ⑨,§17等)によって決せられるものであるにもかかわらず,旧法§602の規定ぶりからすると,短期賃貸借であれば,制限行為能力者も単独で有効に行うことができるとの誤解を招きかねないからです。

契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,当該各号に定める期間とする。」の追記

 一方で,新法§602には,「契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,当該各号に定める期間とする。」との文言が加えられています。

 旧法下において,処分権限を有しない者が旧法§602各号所定の期間を超えた賃貸借を行った場合の取扱いに関しては,長期に及ぶ賃貸借に当事者が拘束され,負担が重くなることを防ぐというパターナリズムから,当該期間を超える部分の賃貸借については無効であると一般に解されていました。

 上記文言は,この一般的解釈を明文化したものです。

 新法§602の趣旨や「契約でこれより長い期間を定めたときであっても」という文言から,新法§602は強行規定であると解されています。

賃貸借の存続期間の上限

賃貸借の存続期間の延長

旧法 新法

【604条】(賃貸借の存続期間)
1項:賃貸借の存続期間は,二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,二十年とする。

2項:賃貸借の存続期間は,更新することができる。ただし,その期間は,更新の時から二十年を超えることができない。

【604条】(賃貸借の存続期間)
1項:賃貸借の存続期間は,五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,五十年とする。

2項:賃貸借の存続期間は,更新することができる。ただし,その期間は,更新の時から五十年を超えることができない。

 賃貸借の存続期間の上限が20年から50年へと伸長されました(新法§604Ⅰ)。

 存続期間が長期である賃貸借を一般的に認めてしまうと賃貸物の損傷や劣化が顧みられない状況が生じ,国民経済上の問題があるし,もし20年を超える利用関係を設定する必要があるなら,地上権や永小作権を設定すればよいと考えられていたため,旧法§604Ⅰは,賃貸借の存続期間の上限を20年にとどめていました。

 しかし,土地の利用関係の設定について,旧法の立案担当者の想定したようには地上権や永小作権は利用されませんでした。

 地上権等の負担が賃借権に比べて相当重く,土地所有者が地上権等の設定を嫌ったからなどの理由があります。

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  • 土地賃借人は設定者に対する登記請求権を有しないが,地上権者は有する。
  • 存続期間の約定がない場合に,地上権は設定者の意思表示により消滅させられることがなく(民§268参照),また,永小作権も設定者の意思表示により消滅させられる場合が制限されているが(民§276),賃借権は賃貸人の解約申入れにより消滅させられる(民§617参照)。
  • 賃借権は賃貸人の同意がなければ譲渡できないが(民§612Ⅰ),地上権等は設定者の同意がなくても譲渡できる(民§272本文参照)。

などの点で地上権等の負担は賃借権のそれよりも重いと言われているよ!

 一方,現代では,例えば,大型プロジェクトにおける重機・プラントの賃貸借や,ゴルフ場・太陽光発電所の設置を目的とする賃貸借について,20年を超える存続期間を許容するニーズがあります。

 そこで,この度の改正では,賃貸借の存続期間の上限を伸長することにしたのです。

 そうすると,賃貸借の存続期間の上限を何年とすべきかが問題となりますが,あまりにも長期にわたると,目的物の所有権者に過度の負担となってしまいます。

 そこで,存続期間の上限を50年とする永小作権(民§278)と平仄を合わせ,賃貸借の存続期間の上限も50年とすることにしました。

 新法§604Ⅰは,その趣旨や「契約でこれより長い期間を定めたときであっても」との規定ぶりから,強行規定であると解されています。

 また,賃貸借の存続期間の上限が50年に伸長されたことに伴い,新法§604Ⅱでは,賃貸借契約を更新する場合においても,更新の時から50年を上限として更新する旨の合意をすることができるよう改正されています。

 なお,以上の改正の影響を受ける賃貸借は,㋐建物所有目的の土地賃貸借(借地借家法§3),㋑建物賃貸借(同法§29),㋒農地・採草放牧地の賃貸借(農地法§19)以外の賃貸借です。

賃貸不動産 賃貸借の存続期間 根拠規定
建物所有目的の土地 30年以上 借地借家法§3
建物 期間を1年未満とした場合は,期間の定めがないものとみなされる 借地借家法§29
農地・採草放牧地 50年以下 農地法§19(本改正により削除)
その他 50年以下 新民法§604

経過措置

 (上記㋐~㋒以外の)賃貸借契約の締結日が新法施行日前であっても,施行日以後に当該契約を更新する旨の合意がされる場合には,新法§604Ⅱの規定が適用されます(附則§34Ⅱ)。

確認問題〔賃貸借①―短期賃貸借・賃貸借の存続期間の上限等〕

新法に基づいて回答してください!(全2問)

 

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