【2020年民法改正】寄託【勉強ノート】

改正のポイント

 寄託に関する改正については,基本的には旧法下での実務の運用を反映させる改正ですが,新法§658Ⅱや新法§660Ⅱ但書等,実質的内容が変更されたものもあり,それらは実務に影響をもたらすとみられているため,注意が必要です。また,旧法下での運用を踏まえ,混合寄託の規定が新設され,消費寄託に関する規定が見直されました。

寄託の諾成契約化

寄託の成立要件

旧法 新法
【657条】(寄託)
寄託は,当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
【657条】(寄託)
寄託は,当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。

 旧法§657は,寄託について,その成立には寄託物の交付を要する要物契約としていました。

 しかし,実務上,当事者間の合意のみに基づき寄託物の引取りを受寄者に義務付ける諾成的寄託が広く利用されていたことから,新法§657は,寄託を合意のみで成立する諾成契約としました。

寄託物の受取り前の解除等

旧法 新法
規定なし

【657条の2】(寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等)
1項:寄託者は,受寄者が寄託物を受け取るまで,契約の解除をすることができる。この場合において,受寄者は,その契約の解除によって損害を受けたときは,寄託者に対し,その賠償を請求することができる。

2項:無報酬の受寄者は,寄託物を受け取るまで,契約の解除をすることができる。ただし,書面による寄託については,この限りでない。

3項:受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては,書面による寄託の受寄者に限る。)は,寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず,寄託者が寄託物を引き渡さない場合において,相当の期間を定めてその引渡しの催告をし,その期間内に引渡しがないときは,契約の解除をすることができる。

寄託物の受取り前の寄託者による解除等(新法§657の2Ⅰ)

 上記のとおり,寄託契約が諾成契約とされたので,一旦,寄託契約が成立してしまえば,寄託者が受寄者に寄託物を保管させる前に,保管させる必要性がなくなったとしても,寄託者は受寄者に寄託物を渡さなければならないという拘束を受けることになります。

 しかし,寄託契約の成立により,受寄者に寄託物の引取義務が生じますが,一方で,寄託者に寄託物の引渡義務は生じないことに異論はなく,寄託者が寄託を望まなくなった場合に契約関係を存続させる必要はないと考えられます。

 もっとも,寄託契約が成立すれば,受寄者は寄託物の保管に向けて様々な準備を始め,急に契約を打ち切られれば,その準備が無駄になってしまうこともあるでしょう。

 そこで,新法では,寄託者は,受寄者が寄託物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるとするとともに,受寄者は,その契約の解除によって損害を受けたときは,寄託者に対し,その賠償を請求することができるとしています(新法§657の2Ⅰ)。

寄託物の受取り前の受寄者による解除等

1 無報酬の受寄者(新法§657の2Ⅱ)

 無報酬の受寄者は,書面による寄託を除き,寄託物を受け取るまで,契約の解除をすることができるとしています(新法§657の2Ⅱ)。

 これは,前述のとおり,寄託は合意のみによって成立するところ,無報酬の受寄者については,軽率な契約がされることを防止するとともに,受寄者の意思が不明確となり将来紛争が生ずることを予防する趣旨です。

 なお,ここにいう「書面」には,寄託者の意思や,寄託契約の詳細な内容まで具体的に記載されている必要はありませんが,寄託物を無報酬で保管する旨の受寄者の意思が現れているものでなければなりません。

2 有報酬又は書面による寄託の受寄者(新法§657の2Ⅲ)

 他方で,報酬を得る受寄者や書面による寄託における無報酬の受寄者については,寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず,寄託者が寄託物を引き渡さない場合において,相当の期間を定めてその引渡しの催告をし,その期間内に引渡しがないときは,契約の解除をすることができるとしています(新法§657の2Ⅲ)。

再寄託

旧法 新法

【658条】(寄託物の使用及び第三者による保管)
1項:受寄者は,寄託者の承諾を得なければ,寄託物を使用し,又は第三者にこれを保管させることができない。

2項:第百五条及び第百七条第二項の規定は,受寄者が第三者に寄託物を保管させることができる場合について準用する。

【658条】(寄託物の使用及び第三者による保管)
1項:受寄者は,寄託者の承諾を得なければ,寄託物を使用することができない。

2項:受寄者は,寄託者の承諾を得たとき,又はやむを得ない事由があるときでなければ,寄託物を第三者に保管させることができない。

3項:再受寄者は,寄託者に対して,その権限の範囲内において,受寄者と同一の権利を有し,義務を負う。

再寄託の要件

 受寄者が寄託物を第三者に保管させる場合(再寄託)について,新法では,寄託者の承諾を得た場合のみならず,やむを得ない事由があるときにも,再寄託をすることができることとしました(新法§658Ⅱ)。

 受寄者に再寄託をするやむを得ない事由があるにもかかわらず,寄託者の承諾を得ることが実際上困難な事情がある場合に,再寄託ができないのは受寄者にとって不都合であり,このような場合にも再寄託を認めるべきだと考えられたからです。

 なお,「やむを得ない事由があるとき」とは,受寄者が自ら保管をすることが困難な事情があるだけでは足りず,例えば,寄託者が急病により意識不明であるために再寄託についての許諾を得ることができないような事情があることをいうと解されています。

再寄託をした受寄者の責任

 そして,旧法では,再寄託をした受寄者の責任について,旧法§105を準用していましたが(旧法§658Ⅱ),旧法§105が削除され,任意代理人は債務不履行の一般原則に従って責任を負うこととされました。

 それに伴い,再寄託の受寄者についても,再受寄者の行為によって生じた結果について債務不履行の一般原則に従って責任を負うこととされました。

 したがって,旧法§658Ⅱのうち,旧法§105を準用する部分は削除されています。

再受寄者の権利義務

 旧法§658Ⅱと新法§658Ⅲは規定ぶりは異なりますが,基本的に同内容の規定です。

 新法§658Ⅲは,再受寄者の権利義務の範囲が受寄者のそれと必ずしも同一ではないことを明確にするために,旧法§107Ⅱをそのまま準用するのを止め,「再受寄者は,寄託者に対して,その権限の範囲内において,受寄者と同一の権利を有し,義務を負う。」と書き下ろすことにしたのです。

寄託物について権利を主張する第三者が存在する場合

旧法 新法
【660条】(受寄者の通知義務)
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し,又は差押え,仮差押え若しくは仮処分をしたときは,受寄者は,遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。

【660条】(受寄者の通知義務等)
1項:寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し,又は差押え,仮差押え若しくは仮処分をしたときは,受寄者は,遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。 ただし,寄託者が既にこれを知っているときは,この限りでない。

2項:第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても,受寄者は,寄託者の指図がない限り,寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。ただし,受寄者が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において,その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって,その第三者にその寄託物を引き渡したときは,この限りでない。

3項:受寄者は,前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には,寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても,その賠償の責任を負わない。

受寄者に対する訴え提起等の寄託者に対する通知

 旧法は,寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対する訴えの提起等をした場合に,受寄者は寄託者に通知する義務を負う旨を規定し,特にその例外を定めていませんでした(旧法§660)。

 しかし,同条の趣旨は,寄託者に訴え提起等に対処する機会を与えることにあったので,寄託者がすでに受寄者に対して訴え提起等がなされた事実を知っている場合にまで,受寄者に上記通知を義務付ける必要はありません。

 そこで,新法では,寄託者がすでに受寄者に対して訴え提起等がなされた事実を知っている場合には,受寄者は通知義務を負わない旨の規定が新設されました(新法§660Ⅰ但書)。

寄託物の返還義務等

 旧法下では,寄託物について権利を主張する第三者が現れた場合に,受寄者は寄託物を寄託者に返還すべきなのか,それとも当該第三者に返還すべきなのか,また,受寄者が寄託者に寄託物を返還したことで,第三者に損害が生じた場合,損害賠償責任を負わなければならないかといった点について,統一的な立場が存在しませんでした。

 そこで,新法では,これらの問題について,立法的解決を図ることにしました。

 まず,第三者が受寄者に対する訴え提起等をしたときであっても,受寄者は,寄託者の指図がない限り,寄託者に対し,寄託物を返還しなければならないとされました(新法§660Ⅱ本文)。

 さらに,寄託者の指図がなくても,同条Ⅰ本文に基づき寄託者に通知をした場合又は同項但書により通知を要しない場合であって,権利を主張する第三者に対して受寄者が寄託物を引き渡すべき旨を命ずる確定判決又はこれと同一の効力を有するものがあり,受寄者がその第三者に寄託物を引き渡したときには,寄託者に対して寄託物を返還義務を負わないとされました(同条Ⅱ但書)。

 そして,受寄者は,新法§660Ⅱにより寄託物を寄託者に返還しなければならない場合には,寄託物を寄託者に引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても,その賠償の責任を負わないとされました(同条Ⅲ)。

寄託物の一部滅失・損傷による寄託者の損害賠償請求権・受寄者の費用償還請求権の行使期間の制限等

旧法 新法
規定なし

【664条の2】(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
1項:寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は,寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。

2項:前項の損害賠償の請求権については,寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は,時効は,完成しない。

行使期間の制限

 旧法では,返還された寄託物の一部滅失又は損傷(以下,あわせて「滅失等」といいます。)があった場合の損害賠償及び受寄者が支出した費用の償還について,短期の期間制限は特に設けられていませんでした。

 しかし,寄託物の一部滅失等が受寄者の保管中に生じたものか否かが不明確になることを避けるため,債権債務関係を早期に処理する必要があります。

 そこで,新法では,委託物の一部滅失等による寄託者の損害賠償及び受寄者の費用償還は,寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない旨の規定が新設されました(新法§664の2Ⅰ)。

 この1年の期間は権利保全期間であり,除斥期間です。

時効の完成猶予

 寄託物の一部滅失等による受寄者の損害賠償請求権についても,消滅時効の規定(新法§166Ⅰ)が適用されます。

 そうすると,寄託の期間が長期にわたり,受寄者が寄託物の一部を滅失等した時から10年以上経過しても寄託が存続しているような場合は,寄託物が受寄者の管理下にあるため,寄託者が目的物の状況を把握することができないうちに消滅時効が完成してしまい,寄託物の返還を受けて損害賠償請求をしようとしても,請求権自体が時効により消滅してしまっているという不合理な事態が生じかねません。

 そこで,新法では,寄託者保護の観点から,返還された寄託物の一部滅失等があった場合の寄託者の損害賠償請求権に係る消滅時効については,寄託者が返還を受けた時から1年を経過するまでは,時効の完成を猶予しています(新法§664の2Ⅱ)。

混合寄託

旧法 新法
規定なし

【665条の2】(混合寄託)
1項:複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には,受寄者は,各寄託者の承諾を得たときに限り,これらを混合して保管することができる。

2項:前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは,寄託者は,その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。

3項:前項に規定する場合において,寄託物の一部が滅失したときは,寄託者は,混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。この場合においては,損害賠償の請求を妨げない。

混合寄託に関する規定の新設

 新法では,混合寄託に関する規定が新設されました(新法§665の2)。

 混合寄託とは,受寄者が複数の寄託者から同一の種類・品質の物の保管を委託された場合に,これらを混合して保管し,後に寄託を受けた物と同じ数量を返還するものです。

混合寄託の要件

 混合寄託の要件として,一般的な解釈に従い,複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には,受寄者は,各寄託者の承諾を得たときに限り,これらを混合して保管することができる旨定められました(新法§665の2Ⅰ)。

混合寄託の効果

通常の効果

 混合寄託の効果として,一般的な解釈に従い,各寄託者は,受寄者に対し,その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる旨定められました(新法§665の2Ⅱ)。

寄託物の一部が滅失した場合の効果

 また,寄託物の一部が滅失してしまった場合については,寄託者は,混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる旨定められています(新法§665の2Ⅲ前段)。

 その上で,この場合においては,損害賠償を請求することは妨げられないと注意的に規定されています(同項後段)。

消費寄託

旧法 新法

【666条】(消費寄託)
1項:第五節(消費貸借)の規定は,受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。

2項:前項において準用する第五百九十一条第一項の規定にかかわらず,前項の契約に返還の時期を定めなかったときは,寄託者は,いつでも返還を請求することができる。

【666条】(消費寄託)
1項:受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には,受寄者は,寄託された物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。

2項:第五百九十条及び第五百九十二条の規定は,前項に規定する場合について準用する。

3項:第五百九十一条第二項及び第三項の規定は,預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。

 旧法では,消費寄託について,消費貸借の規定を包括的に準用した上で,寄託物の返還時期を定めなかったときは,他の寄託と同様に,寄託者はいつでも寄託物の返還を請求することができる旨定められていました(旧法§666)。

 しかし,理念上,消費貸借は,借主の側に目的物を利用するという利益がある契約であるのに対し,消費寄託は,他の寄託と同様に,寄託者の側に目的物を第三者に保管してもらうという利益があるものであって,両者は基本的な構造が異なっています。

 そこで,新法では,消費寄託についても寄託の規定を適用することを原則とした上で,次のような規定を設けました。

 まず,消費寄託の効果に通常の寄託のそれと違いが存在することから,受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には,受寄者は,寄託された物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならないと定められました(新法§666Ⅰ)。

 その上で,消費貸借の節に設けられている新法§590新法§592を準用する旨の定めが設けられました(新法§666Ⅱ)。

(貸主の引渡義務等)
第五百九十条
   第五百五十一条の規定は,前条第一項の特約のない消費貸借について準用する。
   前条第一項の特約の有無にかかわらず,貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは,借主は,その物の価額を返還することができる。

(贈与者の引渡義務等)
第五百五十一条
 贈与者は,贈与の目的である物又は権利を,贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し,又は移転することを約したものと推定する。
 負担付贈与については,贈与者は,その負担の限度において,売主と同じく担保の責任を負う。


(価額の償還)
第五百九十二条
 借主が貸主から受け取った物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは,その時における物の価額を償還しなければならない。ただし,第四百二条第二項に規定する場合は,この限りでない。

 なお,消費寄託の中でも預貯金契約については,その特殊性から,特例が設けられており,新法§591Ⅱ,Ⅲを準用することとしています。

(返還の時期)
第五百九十一条
 (省略)
 借主は,いつでも返還をすることができる。
   当事者が返還の時期を定めた場合において,貸主は,借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは,借主に対し,その賠償を請求することができる。

確認問題〔寄託〕

新法に基づいて回答してください!(全3問)

タイトルとURLをコピーしました