【2020年民法改正】委任【勉強ノート】

改正のポイント

 委任に関しては,割合的報酬請求の要件が見直されたり,成果完成型委任に関する規定が新設されるなど,実務に影響を与える改正がなされています。

復受任

旧法 新法
規定なし

【644条の2】(復受任者の選任等)
1項:受任者は,委任者の許諾を得たとき,又はやむを得ない事由があるときでなければ,復受任者を選任することができない。

2項:代理権を付与する委任において,受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは,復受任者は,委任者に対して,その権限の範囲内において,受任者と同一の権利を有し,義務を負う。

 委任の復受任に関しては,代理の復代理(新法§104,§106Ⅱ)と同様の改正が行われています。

  • 復受任者の選任要件について,委任者の許諾を得たこと又はやむを得ない事由があることを要する旨を明文化しました(新法§644の2Ⅰ)
  • 代理権を有する受任者が代理権を有する復受任者を選任した場合に,復受任者が委任者に対して,その権限の範囲内において,受任者と同一の権利を有し,義務を負う旨を明確化しました(同項Ⅱ)

報酬

委任事務が中途終了した場合等の報酬に関する一般的規律

旧法 新法

【648条】(受任者の報酬)
1項・2項:(省略)

3項:委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは,受任者は,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

【648条】(受任者の報酬)
1項・2項:(省略)

3項:受任者は,次に掲げる場合には,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一   委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二   委任が履行の中途で終了したとき。

 旧法では,履行の中途で委任が終了したことについて受任者に帰責事由がない場合にのみすでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとしていました(旧法§648Ⅲ)。

 そうすると,受任者が帰責事由がある場合には履行の割合に応じて報酬を請求することができないことになりますが,受任者に帰責事由があっても,委任事務の一部が履行されたのであれば,既履行分に対しては履行の割合に応じて報酬を請求することができるとするのが合理的とも考えられます。

 そこで,新法では,このような考え等のもと,受任者の帰責事由の有無にかかわらず,次に掲げる場合のいずれかに該当するときは,受任者は,すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができることとされました(新法§648Ⅲ)。

  • 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなった場合
  • 委任が履行の中途で終了した場合

 なお,委任者等に帰責事由がある場合には,危険負担の規定(新法§536Ⅱ)が適用され,委任事務の履行が未了の部分も含めて報酬全額の請求をすることができます。

  委任者等に帰責事由あり 受任者等に帰責事由あり 双方に帰責事由なし
旧法 報酬全額の請求が可能
(旧法§536Ⅱ)
割合報酬の請求が不可
(旧法§648Ⅲ)
割合報酬の請求が可能
(旧法§648Ⅲ)
新法 報酬全額の請求が可能
(新法§536Ⅱ)
割合報酬の請求が可能
(新法§648Ⅲ)
割合報酬の請求が可能
(新法§648Ⅲ)

成果等に対する報酬

旧法 新法
規定なし

【648条の2】(成果等に対する報酬)
1項:委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において,その成果が引渡しを要するときは,報酬は,その成果の引渡しと同時に,支払わなければならない。

2項:第六百三十四条の規定は,委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。

 新法では,「委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合」,すなわち,成果が得られなければたとえ委任事務を履行したとしても報酬を支払わない旨の合意がされた場合に関して,次の事柄を内容とする任意規定が新設されました(新法§648の2)。

  • ❶委任事務の履行により得られる成果が引渡しを要するものである場合の報酬の支払時期について,報酬は成果の引渡しと同時に支払わなければならない(達成された成果の引渡しと報酬の支払が同時履行の関係になる)とするもの(新法§468の2Ⅰ)
  • ❷(受任者の帰責事由の有無にかかわらず,)次に掲げる場合のいずれかに該当し,かつ,すでに履行した委任事務の結果が可分でその部分によって委任者が利益を受けるときは,受任者は,その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとするもの(同条Ⅱ・新法§634)
    • 成果が得られる前に委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなった場合
    • 成果が得られる前に委任が解除された場合
委任者に帰責事由あり 受任者に帰責事由あり 双方に帰責事由なし
報酬全額の請求が可能
(新法§536Ⅱ)
割合報酬の請求が可能
(新法§648の2Ⅱ・§634)
割合報酬の請求が可能
(新法§648の2Ⅱ・§634)

委任の解除に伴う損害賠償

旧法 新法

【651条】(委任の解除)
1項:委任は,各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2項:当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは,その当事者の一方は,相手方の損害を賠償しなければならない。ただし,やむを得ない事由があったときは,この限りでない。

【651条】(委任の解除)
1項:委任は,各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2項:前項の規定により委任の解除をした者は,次に掲げる場合には,相手方の損害を賠償しなければならない。ただし,やむを得ない事由があったときは,この限りでない。
一   相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二   委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

 旧法では,委任の当事者の一方(以下,「解除者」といいます。)が,委任を解除した場合において,相手方の損害を賠償しなければならない場合として,解除者が相手方に不利な時期に委任の解除をした場合のみが定められていました(旧法§651Ⅱ)。

 しかし,新法では,判例(最判昭和56年1月19日,最判昭和43年9月3日)を踏まえ,委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除した場合にも,委任の解除に際して損害賠償をしなければならないこととしました(新法§651Ⅱ②)。

 ちなみに,「委任者が受任者の利益…をも目的とする」とは,委任事務を遂行することによって委任者だけでなく受任者も何らかの利益を受けることが契約の目的とされていることをいいます。

確認問題〔委任〕

新法に基づいて回答してください!(全4問)

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