【2020年民法改正】代表取締役の代表権濫用

 旧民法下においては,代表取締役が代表権を濫用して行った行為が,例外的に無効になる根拠は旧民法§93但書の類推適用でしたが(判例),新民法下においては,新民法§107の適用又は類推適用が根拠となります。

 代表取締役が,その権限を自己又は第三者の利益のために利用する行為を代表権濫用といいますが,このような行為も原則として有効です。

 しかし,最判昭和38年9月5日は,旧民法§93但書を類推適用し,相手方が代表取締役が濫用目的を有していることを知り,又は知ることができたときは無効であると判示しました。

 旧民法下においては,代表権濫用や代理権濫用について定めた規定はありませんでした。

 そこで,濫用の場合,自己や第三者のためにするという真意と会社のためにするという外見が一致せず,この不一致を知って行為するという点で心裡留保に類似していることから,旧民法§93但書を借用していました。

 しかし,今般の民法改正で,代理権濫用に関する新民法§107が新設されました。

 そこで,新民法下においては,代表取締役の代表権濫用については,新民法§107が適用又は類推適用されることによって,行為の効力が決せられることになります。

(代理権の濫用)
第百七条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において,相手方がその目的を知り,又は知ることができたときは,その行為は,代理権を有しない者がした行為とみなす。

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