【改正会社法】社外取締役の機能発揮等【2021年3月1日施行】

改正の骨子

  • 取締役等が株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがある場合には、当該株式会社は、その都度取締役会の決議によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができることとされました(改正法§348の2Ⅰ~Ⅲ)。
  • 上場会社等は、社外取締役を設置することが義務付けられました(改正法§327の2)。
  • 社外取締役を選任する議案に係る株主総会参考書類の記載事項として、社外取締役候補者につき、社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要が追加されるなど、社外取締役選任議案に係る株主総会参考書類の記載が見直されました(改正施行規則§74Ⅳ③,§74の3Ⅳ③等)。
  • 事業年度の末日において公開会社である株式会社等については、事業報告の「社外役員の主な活動状況」として、社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の開示が求められることとなりました(改正施行規則§124④ホ)。

業務執行の社外取締役への委託

 現行法上、取締役が「当該株式会社の業務を執行した」場合には、社外取締役の要件を満たさないことになるので(現行法§2⑮イ)、社外取締役は当該株式会社の業務を執行することができません。

 しかし、MBOや親子会社間の取引のように、株式会社と取締役又は執行役(以下、併せて「取締役等」)との利益が相反する状況にある場合、その他取締役等が株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがある場合は、業務執行者から独立した立場にある社外取締役が、当該取引のための交渉等を行うことが適当であると考えられます[1]

 そこで、取締役等が株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがある場合には、当該株式会社は、その都度取締役会の決議によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができることとするとともに(改正法§348の2Ⅰ,Ⅱ)、これにより社外取締役が委託された業務の執行をしたときであっても、社外取締役の要件を満たさないことにはならない旨を規定上明確にしています(同条Ⅲ本文)。

 ただし、社外取締役が、業務執行取締役や執行役の指揮命令に服して、受託業務を行った場合は、社外取締役の要件を満たさないこととなります(同条Ⅲ但書)。

【要件】
  1. 株式会社と取締役との利益が相反する状況にあること又は取締役の業務執行により株主の利益を損なうおそれがあること
  2. 取締役会の決議によりその都度業務執行を社外取締役に委託すること
  3. 社外取締役が業務執行取締役の指揮命令に服することなく業務執行すること

 なお、都度の取締役会決議による委託が必要になる業務は、業務執行取締役等の指揮命令系統に属して行われる業務ですので、例えば、内部通報の窓口や企業不祥事の内部調査等といった、通常は業務執行取締役等の指揮命令系統に属しては行われない業務については、取締役会決議による委託は不要です。


[1] 他の例として、支配株主による従属会社の買収や支配株主に対する第三者割当増資等が実施される場合においても、社外取締役に一定の業務執行を委託することが考えられます。

社外取締役の設置義務付け

 本改正により、公開会社であって、かつ、大会社である監査役会設置会社のうち、その発行する株式について有価証券報告書を提出する義務を負う株式会社(以下「上場会社等」)は、社外取締役を設置することが義務付けられました(改正法§327の2)[1]

 この社外取締役設置義務には経過措置が設けられており、改正法施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を選任すればよいとされています(改正法附則§5)。したがって、例えば、6月総会の上場会社等であれば、改正会社法施行日である2021年3月1日までに臨時株主総会を開催して、社外取締役を選任する必要はなく、2021年6月に開催する定時株主総会で社外取締役を選任すればよいということになります。

 もしこうした社外取締役設置義務に違反して、遅滞なく社外取締役を設置しなかった場合は、㋐取締役が100万円以下の過料に処されたり(改正法§976⑲の2)、㋑改正会社法施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会以降に、社外取締役による監督がない状況で開催された取締役会の決議が無効になるなどのペナルティが科されるおそれがあります[2]


[1] 発行株式について有価証券報告書の提出義務を負う株式会社とは、上場会社や株主数が1,000人以上である株式会社等です(金商法§24Ⅰ各号、金商法施行令§3の6Ⅳ)。
[2]竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)160頁。

役員選任議案に関する株主総会参考書類の開示事項の充実等

⑴ 開示事項の充実

ア 改正の概要

 本改正では、社外取締役を選任する議案に係る株主総会参考書類の記載事項として、社外取締役候補者につき、社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要[1]が追加されました(改正施行規則§74Ⅳ③,§74の3Ⅳ③)。

 「社外取締役候補者につき、社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」については、社外取締役による監督の実効性を担保するため、社外取締役候補者とした理由等(現行施行規則§74Ⅳ②,§74の3Ⅳ③等)に加え、社外取締役候補者に対して、どのような視点からの取締役の職務の執行の監督を期待しているかなど、株式会社が当該社外取締役候補者にどのような役割を期待しているかをより具体的に記載することが要求されています[2]

 起案にあたっては、菊地伸「二〇二一年定時株主総会に向けた課題と運営準備のポイント」旬刊商事法務2250号16頁の記載例が参考になります。

イ 経過措置及び留意事項

 改正法の施行日以後に招集手続が開始された株主総会に係る参考書類について対応が必要となります(改正省令附則§2Ⅸ)。

 なお、事業報告において「社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」の開示が求められる会社が公開会社に限定されているのと異なり、参考書類に関して対応が必要となる会社は公開会社に限定されていないことに注意が必要です。

⑵ 開示事項の削除等

 一方、上場会社等は、改正法の施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明したり、株主総会参考書類に記載する必要がなくなりました(改正法§327の2及び改正施行規則§74の2削除,改正法附則§5,改正省令附則§2Ⅶ)。上記のとおり、上場会社等は、社外取締役の選任が義務付けられたためです。

 なお、㋐施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告の記載・記録、及び、㋑施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る株式会社の事業報告における現行施行規則§124Ⅱの理由の記載・記録については、なお従前の例によることとされています(改正省令附則§2Ⅺ)。

【6月総会開催会社の場合】
時点 社外取締役
の人数
社外取締役選任議案
提出義務の有無
「社外取締役を置くことが相当出ない理由」の総会での説明・参考書類の記載 事業報告における「社外取締役を置くことが相当でない理由」の記載
2021年6月総会 0人 不要 必要
2022年6月総会 1人
(定款で取締役の任期を1年に短縮している場合は有)
不要 不要


[1] 参考:経済産業省「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」(2020年7月31日)
[2] パブコメ結果第3の1(4)イ②,③。社外取締役の選任後に事業環境の変動等によって期待されていた役割が変動した場合に、当該役割以外の役割に係る行為を行うことは妨げられないことにつき、パブコメ結果第3の1(4)イ④を参照。

公開会社における事業報告の開示事項の拡充

 本改正では、事業年度の末日において公開会社である株式会社等については、事業報告の「社外役員の主な活動状況」として、社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の開示が求められることとなりました(改正施行規則§124④ホ)。「社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」の対象期間は、これを記載する事業報告の対象となっている事業年度の初日から末日であって、その期間内に行われた社外取締役の職務の概要を、当該社外取締役が果たすことが期待される役割との関連性を示した上で、具体的に記載する必要があります[1]

 起案にあたっては、菊地伸「二〇二一年定時株主総会に向けた課題と運営準備のポイント」旬刊商事法務2250号17頁の記載例が参考になります。


[1] パブコメ結果第3の1(7)エ③。

改正対応事項

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