【改正会社法】上場子会社における少数株主の保護【2021年3月1日施行】

事業報告における親会社との関係に関する記載の追加

⑴ 改正の概要

 上場子会社における少数株主保護の見地から、公開会社は、親会社と当該株式会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、事業報告において、その内容の概要を記載することが求められるようになりました(改正施行規則§120Ⅰ⑦)。

 親会社が当該株式会社を支配する方向の合意等に限らず、「例えば、当該株式会社において、親会社が当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に及ぼす影響を踏まえ、少数株主保護のための措置を講ずることを親会社との間で合意等をしている場合には、その内容の概要等を記載する」ことが想定されています[1]

 なお、「『契約等』は、当該親会社と子会社との間で合意されたものを意味し、契約という形態でされたものに限られ」ませんが[2]、「当該株式会社が関知していない親会社における方針等の記載を求めるものではない」[3]ため、当該株式会社が不知の情報を求めて積極的に親会社に対して開示を要求するなどのアクションをとる必要はありません。

 起案にあたっては、菊地伸「二〇二一年定時株主総会に向けた課題と運営準備のポイント」旬刊商事法務2250号17頁の記載例が参考になります。

経過措置

 当該改正は、2021年6月総会を開催する公開会社から対応が求められることになります(改正省令附則§2Ⅺ)。


[1] 法務省「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」(2020年11月24日)第3の1(7)オ③。
[2] 法務省「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」(2020年11月24日)第3の1(7)オ③。
[3] 法務省「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」(2020年11月24日)第3の1(7)オ①。

取締役等選任候補者と親会社等の関係に係る事項の対象期間の拡張

 親会社等が存在する公開会社における取締役又は監査役の選任議案に係る株主総会参考書類について、候補者が親会社等若しくは特定関係事業者の業務執行者であったことを知っている場合等に記載すべき事項の対象期間が過去5年から10年に拡張されました(改正施行規則§74Ⅲ③,Ⅳ⑦ロ,ハ,§76Ⅲ③,Ⅳ⑥)。

 当該改正は、2021年6月総会を開催する公開会社から対応が求められることになります(改正省令附則§2Ⅶ)。

対応必要事項(対応優先度・必要性:高)

  • [2021年6月総会から対応]親会社等が存在する公開会社は、親会社と当該株式会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、事業報告において、その内容の概要を記載する。
  • [2021年6月総会から対応]親会社等が存在する公開会社は、取締役又は監査役の選任議案に係る株主総会参考書類において、候補者が親会社等若しくは特定関係事業者の業務執行者であったことを知っている場合等に記載すべき事項について、過去10年に遡って記載する。
Please follow and like us:

コメント

タイトルとURLをコピーしました