【会社法改正】株主総会資料の電子提供制度【2022年度中施行予定】

改正の骨子

  • 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社が、そのホームページ等のウェブサイトに株主総会の3週間前又は招集通知の発送日のいずれか早い日までに株主総会資料を掲載し、書面による招集の通知で当該ウェブサイトのアドレス等を通知すれば、当該株主総会資料を書面で送付する必要がなくなりました。
  • 株主は、ウェブサイトに掲載された株主総会資料の書面の交付を請求することができます。

(電子提供措置をとる旨の定款の定め)
第三百二十五条の二
株式会社は、取締役が株主総会(種類株主総会を含む。)の招集の手続を行うときは、次に掲げる資料(以下この款において「株主総会参考書類等」という。)の内容である情報について、電子提供措置(電磁的方法により株主(種類株主総会を招集する場合にあっては、ある種類の株主に限る。)が情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって、法務省令で定めるものをいう。以下この款、第九百十一条第三項第十二号の二及び第九百七十六条第十九号において同じ。)をとる旨を定款で定めることができる。この場合において、その定款には、電子提供措置をとる旨を定めれば足りる。
一 株主総会参考書類
二 議決権行使書面
三 第四百三十七条の計算書類及び事業報告
四 第四百四十四条第六項の連結計算書類

(電子提供措置)
第三百二十五条の三
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、第二百九十九条第二項各号に掲げる場合には、株主総会の日の三週間前の日又は同条第一項の通知を発した日のいずれか早い日(以下この款において「電子提供措置開始日」という。)から株主総会の日後三箇月を経過する日までの間(以下この款において「電子提供措置期間」という。)、次に掲げる事項に係る情報について継続して電子提供措置をとらなければならない。
一 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項
二 第三百一条第一項に規定する場合には、株主総会参考書類及び議決権行使書面に記載すべき事項
三 第三百二条第一項に規定する場合には、株主総会参考書類に記載すべき事項
四 第三百五条第一項の規定による請求があった場合には、同項の議案の要領
五 株式会社が取締役会設置会社である場合において、取締役が定時株主総会を招集するときは、第四百三十七条の計算書類及び事業報告に記載され、又は記録された事項
六 株式会社が会計監査人設置会社(取締役会設置会社に限る。)である場合において、取締役が定時株主総会を招集するときは、第四百四十四条第六項の連結計算書類に記載され、又は記録された事項
七 前各号に掲げる事項を修正したときは、その旨及び修正前の事項
前項の規定にかかわらず、取締役が第二百九十九条第一項の通知に際して株主に対し議決権行使書面を交付するときは、議決権行使書面に記載すべき事項に係る情報については、前項の規定により電子提供措置をとることを要しない。
第一項の規定にかかわらず、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が、電子提供措置開始日までに第一項各号に掲げる事項(定時株主総会に係るものに限り、議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書(添付書類及びこれらの訂正報告書を含む。)の提出の手続を同法第二十七条の三十の二に規定する開示用電子情報処理組織(以下この款において単に「開示用電子情報処理組織」という。)を使用して行う場合には、当該事項に係る情報については、同項の規定により電子提供措置をとることを要しない。

(株主総会の招集の通知等の特則)
第三百二十五条の四
前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合における第二百九十九条第一項の規定の適用については、同項中「二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))」とあるのは、「二週間」とする。
第二百九十九条第四項の規定にかかわらず、前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合には、第二百九十九条第二項又は第三項の通知には、第二百九十八条第一項第五号に掲げる事項を記載し、又は記録することを要しない。この場合において、当該通知には、同項第一号から第四号までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 電子提供措置をとっているときは、その旨
二 前条第三項の手続を開示用電子情報処理組織を使用して行ったときは、その旨
三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
第三百一条第一項、第三百二条第一項、第四百三十七条及び第四百四十四条第六項の規定にかかわらず、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社においては、取締役は、第二百九十九条第一項の通知に際して、株主に対し、株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない。
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社における第三百五条第一項の規定の適用については、同項中「その通知に記載し、又は記録する」とあるのは、「当該議案の要領について第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をとる」とする。

(書面交付請求)
第三百二十五条の五
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主(第二百九十九条第三項(第三百二十五条において準用する場合を含む。)の承諾をした株主を除く。)は、株式会社に対し、第三百二十五条の三第一項各号(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)に掲げる事項(以下この条において「電子提供措置事項」という。)を記載した書面の交付を請求することができる。
取締役は、第三百二十五条の三第一項の規定により電子提供措置をとる場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、前項の規定による請求(以下この条において「書面交付請求」という。)をした株主(当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日(第百二十四条第一項に規定する基準日をいう。)を定めた場合にあっては、当該基準日までに書面交付請求をした者に限る。)に対し、当該株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならない。
株式会社は、電子提供措置事項のうち法務省令で定めるものの全部又は一部については、前項の規定により交付する書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができる。
書面交付請求をした株主がある場合において、その書面交付請求の日(当該株主が次項ただし書の規定により異議を述べた場合にあっては、当該異議を述べた日)から一年を経過したときは、株式会社は、当該株主に対し、第二項の規定による書面の交付を終了する旨を通知し、かつ、これに異議のある場合には一定の期間(以下この条において「催告期間」という。)内に異議を述べるべき旨を催告することができる。ただし、催告期間は、一箇月を下ることができない。
前項の規定による通知及び催告を受けた株主がした書面交付請求は、催告期間を経過した時にその効力を失う。ただし、当該株主が催告期間内に異議を述べたときは、この限りでない。

(電子提供措置の中断)
第三百二十五条の六
第三百二十五条の三第一項の規定にかかわらず、電子提供措置期間中に電子提供措置の中断(株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改変されたこと(同項第七号の規定により修正されたことを除く。)をいう。以下この条において同じ。)が生じた場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、その電子提供措置の中断は、当該電子提供措置の効力に影響を及ぼさない。
一 電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること。
二 電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の十分の一を超えないこと。
三 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは、当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の十分の一を超えないこと。
四 株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと。

(株主総会に関する規定の準用)
第三百二十五条の七
第三百二十五条の三から前条まで(第三百二十五条の三第一項(第五号及び第六号に係る部分に限る。)及び第三項並びに第三百二十五条の五第一項及び第三項から第五項までを除く。)の規定は、種類株主総会について準用する。この場合において、第三百二十五条の三第一項中「第二百九十九条第二項各号」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第二項各号」と、「同条第一項」とあるのは「同条第一項(第三百二十五条において準用する場合に限る。次項、次条及び第三百二十五条の五において同じ。)」と、「第二百九十八条第一項各号」とあるのは「第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合に限る。)」と、「第三百一条第一項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百一条第一項」と、「第三百二条第一項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百二条第一項」と、「第三百五条第一項」とあるのは「第三百五条第一項(第三百二十五条において準用する場合に限る。次条第四項において同じ。)」と、同条第二項中「株主」とあるのは「株主(ある種類の株式の株主に限る。次条から第三百二十五条の六までにおいて同じ。)」と、第三百二十五条の四第二項中「第二百九十九条第四項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第四項」と、「第二百九十九条第二項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第二項」と、「第二百九十八条第一項第五号」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十八条第一項第五号」と、「同項第一号から第四号まで」とあるのは「第三百二十五条において準用する同項第一号から第四号まで」と、同条第三項中「第三百一条第一項、第三百二条第一項、第四百三十七条及び第四百四十四条第六項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百一条第一項及び第三百二条第一項」と読み替えるものとする。

(電子提供措置)
第九十五条の二
法第三百二十五条の二に規定する法務省令で定めるものは、第二百二十二条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用するものによる措置とする。

(電子提供措置をとる場合における招集通知の記載事項)
第九十五条の三
法第三百二十五条の四第二項第三号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 電子提供措置をとっているときは、電子提供措置をとるために使用する自動公衆送信装置のうち当該電子提供措置をとるための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるものその他の当該者が当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録するために必要な事項
二 法第三百二十五条の三第三項に規定する場合には、同項の手続であって、金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第十四条の十二の規定によりインターネットを利用して公衆の縦覧に供されるものをインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧することができるものその他の当該者が当該情報の内容を閲覧するために必要な事項
法第三百二十五条の七において読み替えて準用する法第三百二十五条の四第二項第三号に規定する法務省令で定める事項は、前項第一号に掲げる事項とする。

(電子提供措置事項記載書面に記載することを要しない事項)
第九十五条の四
法第三百二十五条の五第三項に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 株主総会参考書類に記載すべき事項(次に掲げるものを除く。)
イ 議案
ロ 株主総会参考書類に記載すべき事項(イに掲げるものを除く。)につき電子提供措置事項記載書面に記載しないことについて監査役、監査等委員会又は監査委員会が異議を述べている場合における当該事項
二 事業報告に記載され、又は記録された事項(次に掲げるものを除く。)
イ 第百二十条第一項第四号、第五号、第七号及び第八号、第百二十一条第一号から第六号の三まで、第百二十一条の二、第百二十五条並びに第百二十六条第七号から第七号の四までに掲げる事項
ロ 事業報告に記載され、又は記録された事項(イに掲げるものを除く。)につき電子提供措置事項記載書面に記載しないことについて監査役、監査等委員会又は監査委員会が異議を述べている場合における当該事項
三 計算書類に記載され、又は記録された事項(株主資本等変動計算書又は個別注記表に係るものに限る。)
四 連結計算書類に記載され、又は記録された事項(会社計算規則第六十一条第一号ハの連結株主資本等変動計算書若しくは同号ニの連結注記表に係るもの又はこれらに相当するものに限る。)
次の各号に掲げる事項の全部又は一部を電子提供措置事項記載書面に記載しないときは、取締役は、当該各号に定める事項を株主(電子提供措置事項記載書面の交付を受ける株主に限る。以下この項において同じ。)に対して通知しなければならない。
一 前項第二号に掲げる事項 監査役、監査等委員会又は監査委員会が、電子提供措置事項記載書面に記載された事項(事業報告に記載され、又は記録された事項に限る。)が監査報告を作成するに際して監査をした事業報告に記載され、又は記録された事項の一部である旨を株主に対して通知すべきことを取締役に請求したときは、その旨
二 前項第三号に掲げる事項 監査役、会計監査人、監査等委員会又は監査委員会が、電子提供措置事項記載書面に記載された事項(計算書類に記載され、又は記録された事項に限る。)が監査報告又は会計監査報告を作成するに際して監査をした計算書類に記載され、又は記録された事項の一部である旨を株主に対して通知すべきことを取締役に請求したときは、その旨
三 前項第四号に掲げる事項 監査役、会計監査人、監査等委員会又は監査委員会が、電子提供措置事項記載書面に記載された事項(連結計算書類に記載され、又は記録された事項に限る。)が監査報告又は会計監査報告を作成するに際して監査をした連結計算書類に記載され、又は記録された事項の一部である旨を株主に対して通知すべきことを取締役に請求したときは、その旨

株主総会資料の電子提供制度の概要

 今般の会社法改正では、株主総会資料の電子提供制度(以下「本制度」といいます。)が創設されました(改正法§325の2以下)。

 本制度は、取締役が株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し、当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集の通知に記載等して通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていないときであっても、取締役は株主に対して株主総会資料を適法に提供したものとする制度です[1]

 旧法下においては、株主総会資料の株主への提供は、書面によることが原則であり、インターネットを利用する方法により株主総会資料を株主に提供するためには、株主から個別の承諾を得なければなりませんでした。しかし、一般に株主数が多く、株主の入れ替わりも頻繁に発生する上場会社において個別の承諾を得ることは現実的ではありません。そのため、ほとんどこの方法は利用されていませんでした。

 そこで、本制度の創設を通じて、従来の方法の不便を解消し、株主総会資料を印刷したり、株主に郵送したりする時間や費用等が削減され、また、これまでよりも、早期に株主に対して株主総会資料が提供され、株主による議案等の検討期間が確保されることなどが企図されています[2]

 本制度は、2022年度中に施行される予定です。


[1] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)10頁。
[2] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)13頁。

本制度を利用するためにあらかじめ必要となる手続

⑴ 定款変更

 株式会社が本制度を利用するためには、定款において、電子提供措置をとる旨を定める必要があります(改正法§325の2Ⅰ柱書)[1]。定款記載例については、東京株式懇話会「会社法改正の概要と株式実務への影響」(2020年12月4日)90頁等の記載例が参考になります。

 上場会社等の「振替株式を発行する会社」は、かかる定款変更が義務付けられています(整備法§10Ⅱ,改正振替法§159の2Ⅰ)。一般に、こうした会社は、所有と経営の分離の程度が大きいため、株主総会資料の内容を検討する期間を株主に十分に確保させる必要性が高いことなどを理由とします。

 もっとも、上場会社においては、本制度の創設に関する改正規定の施行日をもって、その定款に電子提供措置をとる旨の定めがあるものとみなされます(整備法§10Ⅱ)。そのため、当該施行日に上場会社である会社は、電子提供措置をとる旨の定款変更のために、株主総会の特別決議を経る必要はありません。したがって、理論上、取締役会決議限りで当該定款変更を行うことができます。しかし、このような擬制が生ずる場合であっても、実務上は念のため、当該定款変更につき、定時株主総会決議を経ておくことが提唱されています[2]


[1] 定款に電子提供措置事項を記載・記録するウェブサイトのアドレス等を定める必要はありません。
[2] 東京株式懇話会「会社法改正の概要と株式実務への影響」(2020年12月4日)90,93頁、邉英基「令和元年改正会社法の実務対応(1) 株主総会資料の電子提供制度への実務対応」旬刊商事法務2230号55頁。

⑵ 登記変更

 そして、株式会社が、定款において、電子提供措置をとる旨を定めた場合は、定款変更から2週間以内に、その定めを登記する必要があります(改正法§911Ⅲ⑫の2)。 みなし定款変更の場合には、本制度に係る改正規定の施行日から6ヶ月以内に(それまでに他の登記をする場合は当該他の登記と同時に)、本店所在地において登記をする必要があります(整備法§10Ⅳ,Ⅴ)。

本制度の利用方法

⑴ 電子提供措置

ア 提供方法・提供情報等

 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社は、自社のホームページ等のウェブサイト上に、以下に掲げる事項に係る情報等を内容とする電子データをアップロードし、株主が当該情報の提供を受けることができるようにする措置(=「電子提供措置」)をとることができます(改正法§325の2柱書前段・改正施行規則§95の2)[1]

 株主が当該情報の提供を受けるにあたり、株主にパスワードを要求するなどして、当該情報の提供を受ける者を株主に限定する措置をとることも許されます[2]

  なお、連結計算書類に係る会計監査報告・監査報告についても、電子提供措置をとることができます(改正計算規則§134Ⅲ)。


[1] 電子提供措置は、株主が印刷できる状態で掲載する必要があります(改正施行規則§95の2,§222Ⅱ)。
[2] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)16頁。

イ 特則

 金融商品取引法§24Ⅰの規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が、電子提供措置開始日まで(=遅くとも株主総会の日の3週間前の日まで)に電子提供措置事項(定時株主総会に係るものに限り、議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書(添付書類及びこれらの訂正報告書を含む。)の提出の手続をEDINETを使用して行う場合には、当該電子提供措置事項に係る情報については、電子提供措置をとることを要しないこととされています(改正法§325の3Ⅲ)。

⑵ 電子提供措置の手続の流れ等

ア 電子提供措置の開始・終了時期

 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、次のいずれかに該当する場合には、株主総会参考書類等の内容である情報等について、株主総会の日の3週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日いずれから早い日から株主総会の日後3ヶ月を経過する日まで継続して電子提供措置をとる必要があります(改正法§325の3Ⅰ)。

  • 株主総会に出席しない株主が書面又は電子的方法によって議決権を行使することができることとする場合
  • 株主総会が取締役会設置会社である場合

イ 招集の通知

 そして、電子提供措置をとる場合は、(公開会社であるか、非公開会社であるかを問わず、)株主総会の日の2週間前までに、下記事項を定めた招集の通知を株主に対して発出する必要があります(改正法§325の4Ⅰ,Ⅱ,§299Ⅳ,§298Ⅰ)。

  • 株主総会の日時及び場所
  • 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項(議題)
  • 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
  • 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
  • 電子提供措置をとっているときは、その旨
  • 電子提供措置開始日までに電子提供措置事項(定時株主総会に係るものに限り、議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書・添付書類の提出手続をEDINETを利用して行ったときは、その旨
  • 電子提供措置事項に係る情報を掲載するウェブサイトのアドレス等

ウ 手続の流れ

 書面投票等を設けている会社を想定した本制度に関する手続の期限等を整理すると次のようになります。

⑷ 電子提供措置事項の修正

 誤記の修正や電子提供措置の開始後に生じた事情に基づくやむを得ない修正等であって、内容の実質的な変更とならないものに限り、電子提供措置事項を修正することができます[1]

 そして、電子提供事項を修正した場合は、その旨及び修正前の事項に係る情報について電子提供措置をとる必要があります(改正法§325の3Ⅰ⑦)。

⑸ 電子提供措置の中断

 本制度を利用するどの株式会社においても、電子提供措置事項に係る情報を掲載するウェブサイトに使用するサーバーのダウン等や、ハッキングやウイルス感染等による改竄等によって、株主が電子提供措置事項にアクセスできなくなったり、正確な情報を閲覧等することができなくなったりすることが想定されます。改正会社法は、こうした事象のことを「電子提供措置の中断」と定義し、電子提供措置の中断が生じた場合の規律を新たに設けています。

 電子提供措置の中断が生じた場合でも、事態が重大なものから軽微なものまで想定されるところ、以下に掲げる要件のすべてを充足するときは、当該電子提供措置の効力に影響を及ぼさないこととされています(改正法§325の6)。

  • 電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること
  • 電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと
  • 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは、当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと
  • 株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと

 電子提供措置の中断が生ずるリスクを軽減し、また、仮に電子提供措置の中断が生じた場合も、迅速に対処するために、複数のウェブサイトにおいて電子提供措置をとったり、スペアのウェブサイトを準備しておくことが考えられます。こうした対策をとる場合は、そのすべてのアドレスをあらかじめ招集の通知に記載等しておくか、又はウェブサイトを変更するときにそのアドレスを株主に周知する必要があります[2]


[1] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)30頁。
[2] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)44頁、法務省「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」(2020年11月24日)第3の1(11)⑤。なお、招集の通知に記載するアドレスは、原則、株主総会資料を直接閲覧することができるページに係るものであることが想定されていますが、自社のホームページのトップページ等のURLを記載し、当該トップページから目的のページに到達するための方法を併記することなども許容されています(法務省「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集の結果について」(2020年11月24日)第3の1(11)④)。

書面交付請求制度

⑴ 書面交付請求制度の運用

 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主(電磁的方法により株主総会の招集の通知を発することについての承諾(法§299Ⅲ)をした株主を除く。)は、株式会社、又は当該株主が振替口座を開設する口座管理機関(=「直近上位機関」)に対し、電子提供措置事項を記載した書面(以下「電子提供措置事項記載書面」といいます。)の交付を請求することができます。

 そして、この場合、当該株式会社の取締役は、株主総会の招集の通知に際して、当該株主[1]に対し、当該株主総会に係る電子提供措置事項記載書面を交付する必要があります(改正法§325の5Ⅰ,Ⅱ,改正振替法§159の2Ⅱ)[2] [3]。当該株式会社は、電子提供措置をとっている資料をそのままコピーして交付したり、あるいは、書面交付請求用に印刷した株主総会資料を用意し交付するなどの対応をとることが考えられます[4]

 この書面交付請求制度は、デジタル・ディバイドの解消を目的とするものです[5]

 書面交付請求は、当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日まで[6]に行う必要があります(改正法§325の5Ⅱ参照)。

 なお、定款の規定により株主の書面交付請求権を排除することは認められていません。


[1] 当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日を定めた場合にあっては、当該基準日までに書面交付請求をした者に限ります。
[2] 単元未満株主も書面交付請求を行うことができますが、当該単元未満株主に対して株主総会の招集の通知を発する必要がない場合(法§299Ⅰ,§298Ⅱ本文括弧書)には、書面交付請求がされていたとしても、取締役は電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要はありません。
[3] 書面交付請求権は、少数株主権等(振替法§147Ⅳ)には該当しないため、個別株主通知(同法§154)は不要です(改正振替法§159の2Ⅱ)。
[4] 東京株式懇話会「会社法改正の概要と株式実務への影響」(2020年12月4日)88頁。
[5] 参考:総務省「通信利用動向調査」
[6] 株式会社が当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日を定めていない場合にあっては、株主総会の招集の通知が発出されるまで。

⑵ 電子提供措置事項に係る記載の一部省略

 電子提供措置事項のうち、改正施行規則§95の4に掲げる事項の全部又は一部について、電子提供措置事項記載書面に記載しない旨を定款で定めることができます(改正法§325の5Ⅲ,改正施行規則§95の4)。電子提供措置事項記載書面の記載事項を省略することができる範囲は、ウェブ開示によるみなし提供制度で省略できる範囲の相当部分と重なっていますが、これよりも狭くなっています。

 定款記載例は、東京株式懇話会「会社法改正の概要と株式実務への影響」(2020年12月4日)90頁等の記載例が参考になります。

(電子提供措置事項記載書面に記載することを要しない事項)
第九十五条の四 法第三百二十五条の五第三項に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 株主総会参考書類に記載すべき事項(次に掲げるものを除く。)
イ 議案
ロ 株主総会参考書類に記載すべき事項(イに掲げるものを除く。)につき電子提供措置事項記載書面に記載しないことについて監査役、監査等委員会又は監査委員会が異議を述べている場合における当該事項
二 事業報告に記載され、又は記録された事項(次に掲げるものを除く。)
イ 第百二十条第一項第四号、第五号、第七号及び第八号、第百二十一条第一号から第六号の三まで、第百二十一条の二、第百二十五条並びに第百二十六条第七号から第七号の四までに掲げる事項
ロ 事業報告に記載され、又は記録された事項(イに掲げるものを除く。)につき電子提供措置事項記載書面に記載しないことについて監査役、監査等委員会又は監査委員会が異議を述べている場合における当該事項
三 計算書類に記載され、又は記録された事項(株主資本等変動計算書又は個別注記表に係るものに限る。)
四 連結計算書類に記載され、又は記録された事項(会社計算規則第六十一条第一号ハの連結株主資本等変動計算書若しくは同号ニの連結注記表に係るもの又はこれらに相当するものに限る。)
(略)

 そして、当該定款の定めがある会社においては、電子提供措置事項記載書面に記載しないものとする事項があるときは、株主総会の招集決定を行う際に当該事項を決定する必要があります(改正法§298Ⅰ⑤,改正施行規則§63③ト)[1]

 なお、電子提供措置事項のうち、改正施行規則§95の4に掲げる事項の全部又は一部について、電子提供措置事項記載書面に記載しない旨の定款の定めについては、特にみなし変更や経過措置の規律は設けられていないため、当該定款の定めを新設したい場合は、株主総会の特別決議を経る必要があります(法§309Ⅱ⑪,§466)。


[1] 電子提供措置事項のうち、改正施行規則§95の4に掲げる事項の全部又は一部について、電子提供措置事項記載書面に記載しない旨の定款の定めがある会社においては、書面交付請求があったときに議決権行使書面に記載すべき事項(当該株主に係る事項に限る。)に係る情報について電子提供措置をとることとするときは、株主総会の招集決定を行う際にその旨を併せて決定する必要があります(改正法§298Ⅰ⑤,改正施行規則§63④ハ)。

⑶ 書面交付請求の効力範囲

 一度、書面交付請求がなされると、その後の全ての株主総会(及び種類株主総会)について効力を有することになります(改正法§325の5Ⅰ参照)。

 ただし、当該書面交付請求の日から1年を経過した場合は、株式会社は、当該書面交付請求を行った株主に対し、書面の交付を終了する旨を通知し、かつ、これに異議のあるときは、1ヶ月以上の催告期間内に異議を述べるべき旨を催告することができます(同条Ⅳ)。そして、当該株主が催告期間内に異議を述べない限り、当該株主がした書面交付請求は、催告期間を経過したときにその効力を失います(同条Ⅴ)[1]

 なお、書面交付請求が失効した株主が再び書面交付請求をすることは妨げられません。


[1] 当該株主が異議を述べた場合にあっては、当該異議を述べた日から1年を経過したときは、株式会社は、当該株主に対し、再び通知及び催告をすることができます(改正法§325の5Ⅳ)。一方、当該株主が催告期間内に異議を述べなかったことにより当該株主がした書面交付請求が効力を失った場合であっても、その後、当該株主が改めて書面交付請求をすることは妨げられません。

本制度に係る施行時期等と改正対応のための準備の着手時期

 立法担当者によれば、2022年度中に本制度に係る改正は施行される見込みであるとのことです(改正法附則§1但書,整備法附則柱書但書,同条③)。

 なお、施行日において、振替株式を発行している株式会社は、当該施行日をその定款変更が効力を生ずる日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款変更の決議があったものとみなされます(整備法§10Ⅱ)。

 また、定款変更の決議をしたものとみなされた株式会社の取締役が、施行日から6ヶ月以内の日に開催される株主総会の招集手続を行う場合には、従前の例によるとされています(同条Ⅲ)。したがって、例えば、本制度が2023年3月1日に施行された場合は、6月総会(3月決算)の会社であれば、2023年の定時株主総会では、従前の方法で招集手続を実施すればよく、2024年の定時株主総会から本制度による招集手続を実施することになります。 ちなみに、電子提供措置事項のうち、改正施行規則§95の4に掲げる事項の全部又は一部の記載を省略したい場合は、その旨の定款の定めを新設するため、2024年の定時株主総会に先立って、定款変更の株主総会特別決議を経ておく必要があることに注意が必要です。

Please follow and like us:

コメント

タイトルとURLをコピーしました