【契約実務】〔売買基本契約書〕協議条項に関する修正

 本稿では,次のサンプル条項を例に,危険負担に関する条項の修正方法を検討します。

第19条(協議事項)
1.本契約又は個別契約について定めのない事項若しくは解釈上の疑義が生じた場合は,信義誠実の原則に則り,誠意をもって協議する。
2.前項の協議を行う場合であって,当事者の一方から求めがあったときは,両当事者は,当該協議を行う旨の合意を書面又は電磁的記録により行う。

※ 下線が引かれている箇所は,2020年4月1日施行の改正民法に基づき,修正を加えた箇所です。

 なお,サンプル条項が収録されている売買基本契約書のひな型は以下のページです。

民法改正に伴う修正(2項)

 2020年の民法改正によって,権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によりされた場合は,所定の期間,時効の完成が猶予される旨の規定が新設されました(新法§151)

 改正の詳細は以下のページを是非ご参照いただきたいのですが,契約書においても,この改正を反映させることが考えられます。

 具体的には,時効の完成猶予の効果は,権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によって行われなければ発生しないので,一方当事者が,協議を行う旨の合意を書面又は電磁的記録により行うよう求めた場合に,他方当事者にこの求めに応じるよう義務付ける条項を設けることが考えられます。

 この条項は,基本的に,相手方が債務を履行してくれるか不安な当事者にとって意味がある条項なので,相手方の経営状況や財務状況等をみて,この条項を設けるか否かを検討することになるのではないかと思います。

 とはいえ,旧法では,協議合意に時効の完成を阻止する効果がなかったために,時効完成が迫ってきた場合は,時効完成を阻止する目的のためだけに協議を打ち切り,訴訟の提起等の措置をとらなければならず,当事者が自主的に紛争を解決しようとする努力の障害となっていたことから,このような問題に対処したものが新法§151です。

 そうだとすれば,債務を履行しない当事者からしても,(協議合意による時効完成の猶予期間は最大5年という制約はあるものの,)当事者間での自主的紛争解決の機会が積極的に与えられるという意味では,この条項はそこまで不利に作用しないとも考えられます。

● 参考文献
滝琢磨=菅野邑斗「改正民法対応 はじめてでもわかる 売買契約書」(第一法規株式会社・2019年)
滝琢磨「契約類型別 債権法改正に伴う契約書レビューの実務」(商事法務・2019年)

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